株価指標の見方|PER・PBR・ROE・EV/EBITDA | SG Group
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VALUATION · ST04

株式のバリュエーション入門:PER・PBR・ROE・EV/EBITDAを使い分ける

低PER、高配当利回り、PBR1倍割れは、それだけで割安を証明しません。比率は「価格を何の事業数値で割ったか」を短く表す道具で、分子・分母の時点、会計方針、株数、業種、成長とリスクを揃えなければ比較を誤ります。本稿は主要指標を一つの架空企業で計算し、どの問いに向き、どこで壊れるかを整理します。

この記事が役立つ方: 株式指標を暗記ではなく計算式と前提から理解し、スクリーニング結果を一次資料へ戻したい人

まず押さえる重要ポイント

RATIO SELECTION MAP

指標は答えではなく、問いに合わせて選ぶ

指標分子 / 分母得意な問い主な弱点
PER株価 / EPS利益に対して何倍か赤字・一時利益・循環性
PBR株価 / BPS純資産に対して何倍か資産の質・簿価測定
ROE純利益 / 平均自己資本株主資本の収益性高負債・自社株で上昇
EV/EBITDA企業価値 / EBITDA資本構成をまたぐ比較設備投資・税・運転資本を省略
配当利回り一株配当 / 株価現在価格に対する分配減配・価格下落で高く見える
同じ会社でも利益、純資産、現金創出、分配のどこを見るかで適切な比率が変わります。
DIRECT ANSWER

バリュエーションは価格と事業数値の関係を測る

株式バリュエーションは、現在の価格が利益、純資産、売上、キャッシュフローなどに対してどの水準かを測る作業です。比率は比較を圧縮しますが、将来の適正価格を自動的に決めません。低い倍率は期待成長が低い、利益の質が弱い、負債や規制リスクが大きい、資産に減損懸念があるという市場評価を含む場合があります。高い倍率も高成長を保証せず、期待が外れた時の感応度を高めます。

比較は「同業他社」「同じ会社の過去」「期待する成長と資本コスト」の三方向で行います。同業でも収益構成、会計基準、地域、資本構成が違えば調整が必要です。過去平均も事業モデルや金利環境が変われば基準になりません。数値を一つの順位へまとめず、どの前提なら現在倍率が説明でき、どの実績なら説明できなくなるかを文章化します。

EARNINGS MULTIPLE

PERは利益一単位に払う株価を表す

PERは株価を一株利益EPSで割ります。時価総額を普通株主帰属利益で割っても、株数定義が整えば同じ概念です。実績PERは過去12か月等の利益、予想PERは将来予想を使います。予想期間、コンセンサス集計日、会社予想か分析者予想かを混ぜないでください。四半期の季節性が強い企業では、直近四半期×4の年率換算が実態を歪めることがあります。

赤字ではPERが意味を持たず、極端に小さい正の利益では倍率が跳ねます。資産売却益、税効果、減損、再編費用で純利益が一時的に動けば、表面倍率も動きます。景気循環株は利益ピークでPERが低く見え、利益底で高く見える「逆転」が起きます。営業利益、正規化利益、複数年利益も併記し、調整を行う場合は除外理由を一貫させます。

PERの二つの表し方PER = 一株価格 ÷ EPSPER = 株式時価総額 ÷ 普通株主帰属利益益回り = EPS ÷ 株価 = 1 ÷ PER(利益が正の場合)基本EPSか希薄化後EPSか、実績か予想かを明記します。
BOOK VALUE & RETURNS

PBRとROEは分けずに読む

PBRは株価を一株純資産BPSで割り、ROEは普通株主帰属利益を平均自己資本で割ります。PBRが1倍未満でも、資産が帳簿価額で回収できる、利益が改善する、余剰資本が適切に配分される保証はありません。のれん、不動産、金融資産、研究開発、自己創設ブランドなど、簿価と経済価値の関係は業種で大きく異なります。

単純化するとPBRはPER×ROEの関係を持つため、低PBRは低ROEや高いリスクと整合する場合があります。ROEも高ければ良いとは限りません。借入増加や大規模自社株買いで自己資本が小さくなると、事業利益が変わらなくてもROEは上がります。ROIC、負債、利益率、資産回転を合わせ、収益性が資本コストを継続的に上回るかを確認します。

同じROE 15%でも中身を分ける
会社利益率資産回転財務レバレッジ読み方
架空A高い標準低い事業採算が主因
架空B低い高い標準回転率が主因
架空C標準低い高い負債依存を要確認

DuPont分解の概念例で、実在企業ではありません。

ENTERPRISE VALUE

EV/EBITDAは事業価値と資本構成を分ける

企業価値EVは、株式時価総額に有利子負債等を加え、余剰現金等を控除する考え方です。EBITDAは利息、税、減価償却前利益の近似で、負債比率や減価償却方針が異なる企業の事業倍率を比較しやすくします。しかし優先株、非支配持分、年金、リース、投資資産の扱いでEVは変わり、会社定義EBITDAの調整も一致しません。

EBITDAは現金そのものではありません。設備の更新、ソフトウェア開発、在庫や売掛金への資金、税、利息は実際に価値へ影響します。資本集約型企業が低EV/EBITDAでも、維持投資を引くと自由に使える現金が少ない場合があります。銀行・保険など負債が事業原材料に近い業種ではEV倍率が扱いにくく、P/Bや資本収益性など別の枠組みが必要です。

企業価値倍率の単純形EV = 株式時価総額 + 有利子負債等 − 現金等EV/EBITDA = 企業価値 ÷ EBITDA株主価値 = 企業価値 − 純負債等(調整項目を整合)現金・負債・非支配持分・リース等の調整定義を比較企業間で統一します。
FICTIONAL EXAMPLE

同じ架空企業を複数指標で見る

架空企業Qの株価1,200円、発行済株式1億株、普通株主帰属利益60億円、自己資本480億円、一株配当30円、負債300億円、現金100億円、EBITDA100億円とします。時価総額は1,200億円、EPS60円、BPS480円です。単純計算でPER20倍、PBR2.5倍、ROE12.5%、配当利回り2.5%、EV1,400億円、EV/EBITDA14倍になります。

架空企業Qの倍率
指標計算結果次の確認
PER1,200 ÷ 6020倍利益の持続性と希薄化
PBR1,200 ÷ 4802.5倍資産の質とROE
ROE60 ÷ 48012.5%平均資本と負債依存
配当利回り30 ÷ 1,2002.5%配当性向とCF
EV/EBITDA1,400 ÷ 10014倍設備投資と運転資本

すべて架空。税、自己株、希薄化、平均残高等を単純化しています。

倍率だけでは投資判断になりません。利益が翌年30%減れば実績ベースの見え方は変わり、追加増資があれば一株データも変わります。配当30円が営業CFで賄われているか、負債満期に耐えられるか、競争優位が利益率を守るかを財務三表決算開示で検証します。

COMPARISON CHECKLIST

倍率を並べる前に定義と時点を揃える

比較表には価格日時、通貨、実績・予想期間、利益定義、基本・希薄化後株式数、期末・平均自己資本、負債・現金調整、会計基準、決算期を記載します。為替換算した倍率は、分子と分母を同じ通貨・時点に揃えます。企業行動後は分割調整だけでなく、増資、自社株、買収、事業売却を反映します。

  1. 一次数値を取得

    株価以外は最新の公式財務と注記へ戻る。

  2. 定義を固定

    TTM・予想、基本・希薄化、EV調整を明記する。

  3. 再計算

    データベンダー値と自分の計算差を説明する。

  4. 同業・過去を比較

    事業構成と環境変化を調整する。

  5. 逆算する

    現在倍率が必要とする成長・収益性を文章化する。

金融テンプレートで倍率定義、出典、反証条件を残し、Macro Research Workbenchで金利や実質金利を別の背景変数として整理できます。ツールは適正価格を返しません。入力定義が曖昧なら精密な小数点は信頼性を増やさず、むしろ不確実性を隠します。

よくある質問

PERが低い株は割安ですか?

低PERは入口にすぎません。利益ピーク、一時利益、構造的減益、高負債、規制リスクなどで低く見える場合があります。利益の質と将来前提を確認します。

PBR1倍割れなら解散価値より安いですか?

簿価で全資産を回収でき、負債等を支払い、費用なく清算できる保証はありません。資産の質、収益性、減損、少数株主権を確認します。

EV/EBITDAは現金倍率ですか?

EBITDAは営業CFではありません。設備投資、運転資本、税、利息を省くため、現金創出力の代用として単独利用しないでください。

予想PERと実績PERは比較できますか?

期間と利益定義が違うためそのまま比較しません。予想の集計日、提供元、希薄化、会計調整を揃えます。

根拠資料と確認先

  1. Investor.gov | Price-earnings RatioPERの公式定義
  2. Investor.gov | Market Capitalization時価総額の定義
  3. SEC | Beginners Guide to Financial StatementsEPS、P/E、利益率、財務数値の基礎
  4. IFRS Foundation | IAS 33 Earnings per Share基本・希薄化後EPSの基準

編集・発行: SG Group · 編集方針: 発行会社、取引所、監督当局、会計基準設定主体などの一次資料を優先して確認しています。開示制度、取引条件、株主権は変わるため、判断前にリンク先と利用先の最新情報を確認してください。

重要事項: 本記事は上場株式と株式市場の仕組みを説明する一般的な教育情報であり、投資助言、銘柄推奨、売買シグナル、将来価格や利益の保証ではありません。本文の会社・価格・数量・比率は、公式制度を説明する箇所を除き架空の学習例です。開示制度、税務、手数料、取引時間、受渡し、株主権、商品条件は国・市場・証券会社・時点で異なります。判断前に発行会社、取引所、監督当局、利用する証券会社の最新資料を確認してください。