欧州・北中南米市場分析 – 本日の市場分析・解説 l 2026年10月21日

SG Group · 2026年10月21日

株価の持ち直しは、住宅と家計へ届くのか

対象取引日:米国現地2026年10月20日。情報基準:2026年10月21日5:25(日本時間)。米国株の指数差と9月住宅・州別雇用、8月欧州建設、9月カナダ物価を、期間と確かさを分けて読み解きます。 無料本文の住宅統計表で許可・着工・完成と、着工・完成の前月比に付された誤差幅を照合し、一日の株価から景気全体へ結論を広げる前に、掲載値と不確かさ、追加確認が必要な点を分けられます。

1.米国株の上昇は一様ではなく、住宅の弱さも単純ではありません

S&P 5007,712.57 / +0.28% [7]
ダウ平均52,495.88 / +1.02% [8]
ナスダック総合26,424.82 / -0.02% [9]

10月21日刊行の本号は、米国現地10月20日の通常取引を対象にしています。米国の現物株式市場が終了した後の値として、S&P500は7,712.57、前日比21.84ポイント高、ダウ工業株30種平均は52,495.88、529.85ポイント高、ナスダック総合は26,424.82、6.07ポイント安でした。変化率を小数点以下2桁で示すと、それぞれプラス0.28%、プラス1.02%、マイナス0.02%です。三つの指数を並べると、米国株がすべて同じ強さで上昇した日ではなかったことが分かります。[6][7][8][9]

日付の区別も重要です。日本時間では10月21日朝の情報ですが、取引日はニューヨークの10月20日です。本号で扱う米国の通常取引の終了は現地午後4時、日本時間翌朝5時でした。ここに掲載する指数は先物や差金決済取引の価格ではなく、現物株式の指数の終了後の値です。夜間に動く商品や為替の価格を、同じ時刻に確定した米国株の終値と一括りにはしていません。

その日の報道では、企業利益に関する材料と燃料費の圧力が緩む方向の動きが注目される一方、大型技術株の一部の弱さが指数間の差に関係したと説明されています。本号では個別企業の評価や個別銘柄の判断へは踏み込みません。市場全体の結果として、利益への期待と、金利や家計の負担に対する懸念が同時に存在し得る点を整理します。株価の上昇を、経済のすべての部分が改善した証拠へ広げないことが大切です。[6]

同日に公表された米国の住宅着工は、9月の季節調整済み年率換算で122万1,000戸でした。前月比は5.2%減という点推計ですが、その変化の信頼区間はゼロをまたぎます。住宅の弱さを示唆する数字として注目することと、減少の方向が統計的に確実だと述べることは異なります。一方で、この不確実性を理由に、住宅の資金調達や取得能力の問題が存在しないと結論づけることもできません。数字が語る範囲を狭め過ぎず、広げ過ぎずに扱います。[1]

今回の無料部分では、住宅の許可から着工、完成へ進む段階、州別の雇用変化の広がり、欧州とカナダの異なる対象期間の材料を順に見ます。この順番は、株価と実体経済を同じ尺度で採点するためではありません。資金調達の条件が建設活動へ、雇用が家計の支出へ、エネルギーが費用へ届くまでに、どこで時間差や違いが生まれるかを理解するためです。

S&P500、ダウ平均、ナスダック総合は、対象となる企業や重み付けが同一ではありません。したがって、ダウ平均の上昇率が大きいから、米国のすべての産業が同じ程度に改善したとはいえません。ナスダック総合が小幅安だから、技術の利用や設備投資の需要が全面的に後退したともいえません。指数の差は、その日の価格形成が均一ではなかったことを示しますが、実体経済の内訳まで自動的に説明するものではありません。

価格の上昇と資金の調達量も分けます。株価指数が上がったことは、企業がその日に同じ額の新しい資金を受け取ったことを意味しません。既存株式の売買価格と、増資や借入などによる企業の資金調達は別の取引です。市場の評価が資金調達条件に影響することはありますが、間には契約、信用判断、発行や融資の実行といった段階があります。この違いは、株価と住宅や設備投資をつなぐ際の基本になります。

利益と金利の関係についても、方向を一つに固定することはできません。将来の利益がより大きいと見込まれれば評価を支える要因になりますが、その利益を現在の価値へ換算する際の金利やリスクの条件が厳しくなれば、別の方向に働きます。さらに、借入が必要な事業と自己資金で進められる事業では、金利変化の影響が違います。市場全体の指数には、これらの異なる状況が集約されています。

住宅はこの違いを考えやすい分野です。購入者には長期の返済負担があり、建設事業者には工事の間の資金負担があります。金利や物価が同じ方向に動いても、既存契約、借り換え、新規の購入、建設中の案件では反応する時期が異なります。株価指数に表れた一日の評価を、家計が実際に住宅を取得しやすくなったという変化へ直ちに置き換えることはできません。

本日の読み方は、まず確定した取引結果を確認し、次に各統計が測る活動と期間を確認するというものです。その上で、結果の違いを異常として片づけるのではなく、経済の異なる部分が異なる速さで動いている可能性を考えます。米国を中心に扱いながら、欧州・カナダの材料を比較し、中米・南米へのつながりは貿易、所得、資金調達の経路として区別します。確認できない当日ニュースで地域の空欄を埋めず、根拠がある範囲から全体像を組み立てます。

2.住宅の許可・着工・完成は、別々の段階を測っています

表はこの領域を横にスクロールできます。

米国9月住宅:季節調整済み年率換算 [1]
段階 戸数 前月比と注意
許可 1,400,000 -0.2%
着工 1,221,000 -5.2% ±11.8ポイント、90%信頼区間はゼロを含む
完成 1,192,000 +2.2% ±10.8ポイント、90%信頼区間はゼロを含む

米国の住宅統計を読むときは、許可、着工、完成を同じ景気指標としてひとまとめにしないことが出発点になります。許可は建設を認められた段階、着工は実際に建設へ進んだ段階、完成は供給として使える状態に近づいた段階です。この順番には時間差があり、同じ月に発表された三つの数値が同じ住宅群を追跡しているわけではありません。許可の減少と完成の増加が同時に起きても、直ちに統計の矛盾とはいえません。以前に始まった工事が完成する一方、新しい計画が慎重になっている場合にも、その組合せは生じます。

10月20日に米国勢調査局と住宅都市開発省が発表した9月の新築住宅着工は、季節調整済み年率換算で122万1,000戸でした。改定後の8月128万8,000戸に対して5.2%低い推計です。ただし、この前月比に付された90%信頼区間の幅はプラスマイナス11.8ポイントで、ゼロをまたぎます。したがって、公表された点推計が減ったという事実と、真の変化が減少だったと統計的に確認できたという判断は分ける必要があります。「減少率が大きいので方向は確実」と読み替えることはできません。[1]

許可件数は同じく年率140万戸で、改定後の8月140万3,000戸から0.2%低い水準でした。完成は119万2,000戸で、8月116万6,000戸から2.2%高い推計です。完成の前月比にもプラスマイナス10.8ポイントの幅があり、ゼロを含みます。一方、完成の前年同月比は14.0%減、幅はプラスマイナス11.1ポイントで、こちらはゼロを含みません。前月比と前年同月比では比較対象も不確実性も異なるため、都合のよい一方だけを選んで景気の強弱を決めないことが大切です。[1]

年率換算という単位にも注意が必要です。122万1,000戸は、9月の一か月でその数の住宅が着工したという意味ではありません。季節的な変動を調整した月間のペースを、年単位で比較しやすい形へ換算した値です。ここから単純に年間の実績が確定したとも、翌年も同じ件数が建設されるともいえません。実際の一年間の着工数や地域別の実数を知りたい場合は、それぞれに対応する集計を使います。単位の取り違えは、供給不足の大きさや建設業の活動量を過大に見せる原因になります。

戸建てと集合住宅の違いも、全体の数字の背後にあります。9月の戸建て着工は年率85万9,000戸で、8月90万戸から4.6%低い推計でしたが、この変化の信頼区間もゼロを含みます。5戸以上の建物に含まれる住宅の着工は34万9,000戸でした。これは集合住宅のすべてではなく、2〜4戸の建物を別に含めるかどうかで集計範囲が変わります。報道の「集合住宅」と公式表の「5戸以上」をそのまま照合して、数字が違うから誤りと決めるのも適切ではありません。[1]

建設業界の見方と統計の測定結果も、役割が異なります。全米住宅建設業協会は今回の発表について、資金調達費、建設資材費、労働力不足や住宅取得能力の制約を挙げています。これは業界が認識する背景の説明として参考になりますが、各要因が着工を何戸減らしたかを、この発表だけで切り分けた因果推計ではありません。金利だけで全変化を説明するのではなく、土地、許認可、人手、販売見通しなどが重なり得ることを押さえます。[2]

住宅ローン金利は購入者の月々の返済額に関係し、建設融資の金利は建設中の事業者の費用に関係します。両者は同じ金利ではなく、契約期間、担保、貸し手の審査、固定・変動の区別でも条件が変わります。政策金利の動きが報じられても、すべての住宅ローンや建設融資が同じ日に同じ幅で変更されるわけではありません。既存契約と新規契約の間に差があるため、金融政策の影響には契約更新を通じた時間差も生まれます。

工事の段階を追うことは、この時間差を考える手掛かりになります。許可を得ても、販売の見通しや融資条件が整わなければ着工まで進まない場合があります。着工後は工事が進むにつれて支出が増え、完成後は引き渡しや販売によって資金回収へ向かいます。ただし、住宅統計だけでは、その資金調達が借入だったのか、自己資金だったのか、どの契約が更新されたのかまでは分かりません。工事件数と資金繰りを関連づける際には、統計の範囲外の情報を補う必要があります。

また、許可件数と着工件数の差を、そのまま未着工住宅の増減と扱うことはできません。ここで示す両者は年率換算した活動のペースであり、月末時点の未着工残高とは性質が違います。計画の取り消しや期限切れ、異なる時期に許可された計画の着工もあります。流れを表す数字と、ある時点の残高を表す数字を分けることで、「許可が着工より多いから、その差の住宅がすべて待機している」という誤解を避けられます。

住宅は資金調達、雇用、資材、地域の供給をつなぐ分野ですが、一回の着工統計はその全体像ではありません。今回確認できるのは、9月の活動の点推計と、その比較に伴う不確実性です。次に許可から着工への進み方、数か月の傾向、完成後の供給状況を別々に見ることで、単月の振れを超えた説明に近づけます。株価の一日の変化と、住宅の数か月にわたる工事の進展を同じ速さで読まないことが、今日の材料を整理する基本になります。

3.雇用の広がりを、人数と統計的な確かさから読み分ける

住宅から家計へのつながりを考えるとき、雇用は重要な接点になります。雇用所得は消費や返済を支える一方、建設や関連サービスの活動も雇用を生みます。ただし、住宅着工が減った月に雇用も同じ方向へ同じ幅で動くという関係ではありません。建設には継続中の工事があり、企業は受注の変化に対して、採用、労働時間、外注、配置など複数の方法で調整します。雇用者数だけでその調整のすべてを捉えることはできません。

10月20日発表の米国の9月州別雇用統計では、前月から非農業部門雇用者数が統計的に有意に増えた州は2州、減った州は1州でした。残る47州とコロンビア特別区は、統計上ほぼ変わらないとされています。この表現は、47州で雇用者が一人も増減しなかったという意味ではありません。推計値に変化があっても、それが標本調査の不確実性を超える変化と判定されなかったケースが含まれます。数値が動いたことと、変化が明瞭だったことを分けて読みます。[3]

月間の有意な増加が報告されたのは、ニュージャージー州の1万4,900人とサウスカロライナ州の1万2,500人です。減少はウィスコンシン州の1万3,700人でした。これは全国の増減をこの3州だけで説明できるという意味でもありません。全州の集計と、統計的に有意な変化を示した州の一覧は、答えている問いが異なります。少数の州だけを足し合わせて全国の雇用変化を再現したり、他の地域の活動をゼロとして扱ったりしないことが重要です。[3]

失業率については、5州で前月から有意な低下があり、45州とコロンビア特別区では有意な違いが認められませんでした。ここでも「有意な上昇がない」と「すべての地域で労働市場が強い」は同義ではありません。失業率は労働力人口に占める失業者の比率であり、就業者の増加だけでなく、労働市場へ参加する人の動きによっても変わります。失業率が低下した理由を理解するには、分母と分子の両方に目を向ける必要があります。[3]

この区別は、企業の雇用者数を調べる統計と、家計の就業状態を調べる統計を並べるときにも役立ちます。企業側の統計は仕事の数を、家計側の統計は人の状態を捉えるため、対象や集計方法が一致するわけではありません。複数の仕事を持つ人、調査対象の違い、推計の改定などによって、短い期間では異なる印象になる場合があります。一方の結果が好ましいから他方を無視するのではなく、それぞれが何を測っているかを確認します。

州別の情報は、全国平均で隠れやすい地域差を見るためのものです。人口の多い州と少ない州では、同じ人数の増減でも割合が違います。また、地域の産業構成が異なれば、金利、エネルギー、貿易、公共支出などに対する感応度も異なります。しかし、今回名前が挙がった州の雇用変化を、特定の政策や産業の動きだけへ直結させることはできません。州別の総数を起点として、必要なら業種別やより長い期間の資料で背景を確かめる順序が自然です。

企業の採用判断から家計の支出に至る流れには、いくつもの段階があります。採用が増えれば所得を得る機会が広がり得ますが、家計が使える金額は労働時間、賃金、税、生活費、債務返済にも左右されます。名目の収入が増えても、必要な支出がそれ以上に増えれば、自由に使える余地は広がらない場合があります。そのため、雇用者数の改善だけをもって住宅取得能力や消費の全面的な改善が確認されたとはいえません。

逆に、雇用者数が横ばいでも、労働時間や実質購買力の変化によって家計の状態は変わり得ます。労働時間の短縮で調整する企業と、人員を減らして調整する企業では、人数の統計に表れる時期が違います。既存の雇用を維持しながら新規採用を絞る場合にも、求職者が感じる状況と就業者が感じる状況は一致しません。労働市場の説明では、雇用の水準と新しい仕事へ移る機会を分ける視点も必要になります。

住宅と雇用の統計を並べる際には、対象期間を合わせることが有用ですが、それだけで因果関係が確定するわけではありません。今回はどちらも9月の情報を含みますが、調査の方法や集計の単位は異なります。住宅の弱い点推計と州別雇用の限られた有意な変化が同時に観測されたことは整理できます。それを「住宅が全国の雇用を悪化させた」と言い換えるには、別の証拠が必要です。同時に起きたという説明と、一方が他方を起こしたという説明の距離を保ちます。

日次の市場記事に月次統計を置く意味は、株価の原因を一つに絞ることではありません。市場で取引される期待と、実体経済について新たに確認できた範囲を区別することにあります。企業の利益に対する期待が変わった日にも、地域の雇用や家計の負担が一斉に変わるわけではありません。今回の州別統計は、その広がりを確認するための材料ですが、全米が同じ方向へ動いたとの結論を単独で支えるものではないと理解できます。

4.欧州とカナダの材料は、発表日と対象月をそろえて読む

米国の一日を欧州やカナダへつなぐときは、同じ日に見えた数字が同じ期間を測っているとは限らない点を確認します。10月20日の株価は当日の取引結果ですが、同日に公表された米国住宅統計は9月、欧州の建設生産は8月を対象とします。カナダの9月消費者物価は前日の10月19日に発表された材料です。市場が情報を受け取った日と、実体経済でその活動や価格が観測された期間を区別すると、ニュースを無理なく時系列に置けます。

欧州統計局が10月20日に公表した8月の建設生産は、季節調整済みの前月比でユーロ圏が1.8%増、欧州連合が2.0%増でした。前年同月との比較では、それぞれ1.4%増、2.6%増です。米国の住宅着工と対照的な方向に見えますが、欧州の建設生産と米国の新築住宅着工は同じ指標ではありません。建設の対象範囲、進行中の活動と新規開始の違い、対象月の違いがあるため、この二つだけで欧州の景気が米国を上回ったとはいえません。[4]

生産の指数は、一定期間に行われた活動を比較するためのものです。住宅を何戸建て始めたかという数量とは単位が違い、建設には住宅以外の分野も含まれます。増加率だけを横に並べるよりも、どの範囲の活動が含まれるかを先に見る方が、比較の意味がはっきりします。共通するのは資金調達や工事費の影響を受ける分野だという点であり、同じ速度で反応する同一の市場だという点ではありません。

欧州の8月の生産が増加したことは、その月に活動が増えたとの初期推計を示します。しかし、10月の新規受注や今後の融資条件が改善したことを直接示すわけではありません。過去の契約に基づく工事が進んだ可能性もあれば、新たな需要が寄与した可能性もあります。この切り分けには受注、許可、信用条件などの別の情報が必要です。過去の活動が確認されたという材料と、先の活動の見通しを示す材料を分けて使います。

カナダでは、9月の消費者物価指数が前年同月比3.1%上昇し、8月の3.0%から伸びが加速しました。一方、ガソリンを除く指数は2.2%上昇で、8月の2.4%から減速しています。総合指数の加速と、ある構成項目を除いた指数の減速は両立します。家計が実際に支払う価格を表す総合と、変化の広がりを考えるための除外系列を、どちらか一方が正しい指標であるかのように扱う必要はありません。[5]

前月比では、カナダの総合指数は季節調整前で0.1%、季節調整後で0.4%上昇しました。二つの数字の違いは、季節的に繰り返される変動を調整するかどうかによります。前年同月比の3.1%と月次の0.4%を直接比べて、インフレが急減したと説明することもできません。比較期間と調整方法が違うためです。記事や表で数値を見るときには、単位だけでなく、前年比か前月比か、季節調整済みかどうかを一組として確認します。[5]

エネルギー価格は、米国とカナダ、欧州をつなぐ共通の経路の一つです。しかし、原油市場の一日の値動きが、そのまま各国の家計向け価格になるわけではありません。為替、税、精製、流通、契約、補助制度などが間に入ります。輸入価格が変化してから消費者物価に表れるまでの時間も一定ではありません。燃料費の一時的な緩和と、家計の生活費全体の持続的な落ち着きを同じ出来事として扱わないことが大切です。

また、エネルギーを生産する地域と消費する地域では、同じ価格変化が異なる方向に働きます。燃料を多く使う家計や事業者には費用の変化として現れ、生産側には売上や投資計画の変化として現れます。一国の中にも両方が存在するため、「産油国だから価格上昇が全面的に有利」といった単純な分類では不十分です。生産者の収入と消費者の負担を別々に見ることで、地域全体の影響を考えやすくなります。

発表の順序にも意味があります。カナダの9月物価は10月19日に既に公表されており、10月20日の米国市場にとっては新規の同時発表ではありません。欧州の8月建設生産と米国の9月住宅統計は同日の材料ですが、それぞれの現地時間で市場が受け取る順番は異なります。引け後に公表された情報を、通常取引中の値動きの原因として遡って説明することも避けます。因果関係を語る前に、情報が利用可能だった時点を確かめる必要があります。

このように整理すると、欧州の建設活動、米国の住宅着工、カナダの物価は、同じ問いへの競争する答えではありません。活動の段階、地域、期間、費用の広がりという別の側面を示しています。共通の金利やエネルギーの変化を考える際も、結果が一斉にそろうことを前提とせず、何が既に観測され、何が今後の確認事項なのかを切り分けることができます。国をまたぐ比較ほど、数字の大きさより先に定義をそろえる姿勢が役立ちます。

5.一日の上昇と景気の広がりを、同じ結論にしない

今日の市場を読むための基本的な問いは、株価指数の上昇が何を示し、何をまだ示していないかという点です。株価は将来の利益や割引率、リスクの受け止め方を反映する一方、住宅や雇用の統計は過去の活動を測定します。そのため、住宅着工の点推計が弱い日に株価が上昇しても、それ自体は矛盾ではありません。参加者が別の情報を重視した可能性も、既に弱さを見込んでいた可能性もあり、一つの統計から指数の一日の変化を説明し切ることはできません。

第一に、利益の改善と需要の改善は重なる部分があっても、同じものではありません。利益は売上だけでなく、投入費用、固定費、金利負担、為替、事業構成などにも左右されます。販売数量が大きく増えなくても、費用が落ち着けば利益が改善する場合があります。逆に売上が増えても費用の増加が上回れば利益は圧迫されます。市場全体を説明する際には、業種ごとの利益の広がりと、家計や企業の需要を測る資料を区別して確認します。

第二に、指数の上昇と構成銘柄の広がりも一致しません。時価総額の大きい企業の影響が強い指数では、一部の構成要素の変化が全体の方向を左右することがあります。価格加重の指数と時価総額加重の指数では、同じ市場を見ても重み付けが異なります。したがって、ダウ平均とナスダック総合の動きが違うことから、直ちに資金が一方から他方へ同額移動したと結論づけることはできません。指数は値動きの集計であり、資金流入額そのものではありません。

第三に、金融条件は政策金利だけでは決まりません。長期の金利、信用リスクに対する上乗せ、貸し手の審査、担保評価、資金調達期間などが、実際の負担を形作ります。金利が低下しても借入の利用可能額が縮小すれば、事業者にとって条件が全面的に緩和したとはいえない場合があります。住宅を始める際の資金と、既存の借入を借り換える際の資金でも、必要な条件は異なります。金利の方向と、借りられるかどうかを分けて考えます。

第四に、物価の伸びが落ち着くことと、価格水準が元へ戻ることは違います。前年比の上昇率が鈍化しても、価格自体は前年より高いままの場合があります。家計が直面するのは毎月の支出額であり、物価の変化率だけではありません。所得の伸びや固定的な支出を合わせて考えなければ、購買力の改善は判断できません。カナダの総合とガソリン除外系列の違いは、物価を一つの数字だけで捉えないための分かりやすい例です。

無料部分で整理しておきたいのは、これらの問いを混ぜないことです。例えば、次の住宅統計で着工が増えれば、新しい工事の開始が増えたとの材料になります。しかし、その一回だけで融資条件が恒久的に改善したと証明されるわけではありません。雇用が増えれば所得を支える方向の材料ですが、実質購買力や住宅取得能力の改善は別途確認します。指標を読む目的を先に決めると、一つの好材料をすべての問題の解決へ広げずに済みます。

逆の方向にも同じ注意が必要です。着工の減少だけで、すべての家計が支出を減らしたとはいえません。既存住宅、賃貸、改修、地域間の移動など、新築着工とは異なる活動が存在します。雇用統計で多くの州に有意な変化がなかった場合も、家計が困っていないという証明にはなりません。統計が測らないことを明示するのは判断を避けるためではなく、根拠に合った範囲で説明を成立させるためです。

北米以外へのつながりでも、同じ順序が有用です。米国の需要の変化は、貿易相手の受注や物流に波及し得ますが、国ごとの輸出構成、通貨、契約期間によって影響は違います。中米の家計には雇用所得や送金、南米の生産地域には商品需要や輸出収入といった別の接点があります。ここでは新しい当日統計がすべての地域で出たとは述べず、米国の材料を地域へ接続する際に確認すべき経路として位置づけます。

事実と見通しの境目も明確にします。今日の確定終値、9月の住宅推計、州別雇用、8月の欧州建設生産、9月のカナダ物価は、対象期間を明記した観測結果です。そこから将来の需要、信用、費用、政策対応がどう組み合わさるかは、条件を伴う分析の領域になります。発表された事実に見通しを混ぜて断定するのではなく、どの情報が増えれば説明が変わるかを示すことで、読者は次の材料を同じ枠組みで比較できます。

本日の無料部分の要点は、株式市場の結果と、実体経済の活動や家計の負担を、それぞれの時間軸で読むことです。指数間の差は市場の構成を、住宅の段階の差は工事の進み方を、雇用の統計的な違いは変化の確かさを、物価の内訳は費用の広がりを考える手掛かりになります。それぞれを一つの強弱判定へ押し込めず、比較対象と限界を保つことが、次の発表を理解するための土台になります。

確認の順序をそろえることは、異なる見方を比較する際にも役立ちます。同じ数値を見ても、利益を重視する説明と、家計の負担を重視する説明では結論が違う場合があります。その違いを評価するには、どちらが正しいかを先に決めるより、対象とする期間、主体、変化の経路が同じかを確かめます。短期の価格と長期の供給という別の問いを、互いの反証として使わないことが必要です。

本日の市場の要点

米国の現物指数は一様な上昇ではありませんでした。住宅の弱い点推計は、信頼区間と工事の段階を合わせて読む必要があります。州別雇用の有意差、各国の対象月、物価の内訳を区別することが、実体経済の広がりを理解する出発点です。

無料部分の参考資料

  1. Census/HUD: New Residential Construction, September 2026 (October 20)
  2. NAHB: September housing starts (October 20, 2026)
  3. BLS: State Employment and Unemployment, September 2026 (October 20)
  4. Eurostat: August 2026 construction production (October 20)
  5. Statistics Canada: September 2026 CPI (October 19)
  6. AP: October 20 US market close (updated October 21, 05:22 JST)
  7. Yahoo Finance: S&P 500, October 20 cash close
  8. Yahoo Finance: Dow Jones Industrial Average, October 20 cash close
  9. Yahoo Finance: Nasdaq Composite, October 20 cash close

本稿はSG Groupによる一般情報・教育目的の市場解説です。金融商品の売買、保有、配分を勧める投資助言や勧誘ではありません。統計は改定され、条件付き分析は将来の結果を保証しません。

関連記事

分析・解説

この記事の続きは有料です

この記事だけ読む

この記事の有料部分を、買い切りで閲覧できます。

1回限りのお支払い 【単品購入】本日の欧州/北中南米市場分析・解説

¥150

本日の欧州 / 北中南米市場分析・解説

【セット割引】本日の市場分析・解説セット本日のアジア市場分析・解説記事及び本日の欧州/北中南米市場分析・解説記事の有料部分をセット割引でまとめた契約期間中すべて閲覧できるプランです。

【セット割引】本日の市場分析・解説とグローバルマクロ分析本日の市場分析・解説記事の有料分析部分と、長期・マクロを中心とする有料リサーチ記事の両方を、契約期間中すべて閲覧できる統合プランです。日々の市場動向とニュースの整理・分析から、中長期の市場テーマ、金融政策、企業業績、政策、地政学の深掘りまで、SG Groupの有料記事をまとめて利用できます。最上位プランとなり、全ての有料購読記事へアクセス可能でございます。

お支払いはStripeの安全な決済ページで行います。

購読は自動更新され、いつでも解約できます。解約・返金の条件は特定商取引法に基づく表記に従います。