アジア市場分析 – 本日の市場分析・解説 l 2026年10月11日

SG Group | アジア来週の見通し

来週の物価と雇用は、需要の強さをどう映すか

対象週:2026年10月12〜18日。情報基準:10月11日12:00日本時間。東京の最新完了取引日:10月9日。本日は日曜休場で当日の現物終値はありません。

1.来週は「物価の数字」を「需要の強さ」と分けて読む

東京現物

10月12日

スポーツの日・休場 [1]

日本

10月13日8:50

9月企業物価・貸出預金 [3]

中国

10月14日10:30

9月CPI・PPI、日本時間 [4]

豪州

10月15日9:30

9月雇用、日本時間 [5]

2026年10月12〜18日のアジア市場を考えるうえで中心になるのは、価格の変化が何を意味するかという問いです。日本の企業物価、中国の消費者物価と生産者物価、豪州の雇用、シンガポールの金融政策が、同じ週に異なる角度から経済を照らします。さらに米国の物価発表が、日本の現物市場が閉じた後に続きます。数字が上がったか下がったかだけでなく、どの段階の価格で、誰の支出や収入に対応するのかを整理することが、週の全体像を理解する出発点です。

本号の対象は10月12日月曜日から18日日曜日までで、情報基準は10月11日12:00日本時間です。本日は日曜日で東京の当日現物終値はありません。東京の最新完了取引日は10月9日ですが、その日の価格を本日の価格として読み替えることはしません。今回の見通しは、未発表の統計値を先取りするものではなく、公表予定と読み方を整理するものです。予定は変更される場合があり、発表後には実際の公表日時と対象期間を改めて確かめる必要があります。

週の入口には日本特有の日程があります。10月12日はスポーツの日で、東京現物市場は休場です。したがって、日本の月曜日の現物取引が海外材料を吸収するという前提は置けません。休場中にも海外で情報が増えれば、日本の現物市場がそれを価格に反映する最初の機会は異なります。先物や外国為替の動きが観察できても、それを東京現物市場の当日終値と呼ぶことはできません。市場ごとに取引時間と商品が違うためです。[1]

中国本土では国慶節の休場が10月1〜7日で、上海証券取引所は8日から通常取引に戻っています。10日土曜日は振替出勤日の制度から株式市場の営業日を推測するのではなく、取引所が週末休場と明示しています。来週の中国を読む際には、長い休場期間をまたいだ価格調整と、その後に発表される統計を区別します。休場明けの値動きだけから、休場中に中国の実体経済が同じ割合で変化したとは判断できません。[2]

物価の数字には、消費者が購入する段階と企業が取引する段階という違いがあります。例えば原材料価格が変わっても、その全額が直ちに最終商品の価格へ移るわけではありません。在庫として保有する期間、価格を決める契約、輸送や加工の費用、販売側の利幅などが間に入ります。企業の取引価格と消費者の支払価格を並べる意味は、同じ数字になることを確認するためではなく、その間にある過程を考えるためです。

もう一つ区別したいのは価格と数量です。売上金額が増えていても、値上がりによるものか、販売数量が増えたものかでは説明が変わります。逆に価格の伸びが鈍くても、数量が保たれていれば、支出する側の負担が和らいでいる可能性があります。どちらも価格指数だけでは完結しない話です。来週の発表は需要の最終判定ではなく、数量・所得・雇用を調べるための問いを具体化する材料として位置づけます。

前週の解説で扱った、企業側の回復と家計側の購買力が必ずしも同じ強さで動かないという論点は、この週にもつながります。企業が高い価格で販売できることは、その商品を買う家計にとって支出負担が増すことでもあります。しかし原材料や輸送費も上がっていれば、企業の利益が同じように改善するとは限りません。企業、家計、海外取引を一つの景気評価にまとめる前に、誰がどの価格を負担しているのかを分けて読む必要があります。

金利や通貨は、その関係に時間差を加えます。ある時点の為替変動は、新しい輸入契約には早く影響しても、既存の在庫や長期契約には遅れて表れることがあります。金利の変化も、新規の借入れと既存の固定金利の借入れでは伝わり方が異なります。このため、一日の市場変動と一か月の物価指数を直接一対一で結びつけず、取引条件がいつ変更されるのかという中間の段階を考えます。

統計を読む時間軸もそろえます。来週公表される主要な月次物価や豪州の労働力調査は、主として9月を対象にしています。10月中旬に発表されるからといって、10月中旬の状況をそのまま測っているわけではありません。一方で政策声明は、既往の統計と先行きの評価を合わせて説明する資料です。同じ日に出た資料でも、観察した時期と判断が向けられる時期には違いがあります。[3][4][5][6]

本号では、市場予想の平均値や特定の予想レンジを確認済みの事実として置いていません。発表値が前回より高いことと、市場参加者が事前に想定した水準を上回ることは別です。後者を述べるには、予想の出所、集計時点、対象系列をそろえる必要があります。予想を確認できない段階では、前回との差と内訳の変化を説明し、予想との差を作りません。

週の注目点を短くまとめれば、日本は企業の価格と金融数量、中国は消費者と工場出荷の価格、豪州は雇用者数と労働時間、シンガポールは為替を通じた政策の説明です。米国の物価はアジア域外の材料ですが、国際的な資金調達条件や通貨の評価を通じて無関係ではありません。これらを同じ景気指標の代用品として扱わず、互いに異なる問いへ答える資料として組み合わせます。

2.日本の企業物価と金融統計は、家計の景気実感へどうつながるか

表は必要に応じて横に動かせます。

日本の観測対象を分ける
資料 対象と公表 確認できた事実
企業物価 9月・10月13日8:50日本時間 企業間の財の価格。家計物価とは異なる [3][7]
貸出・預金 9月・10月13日8:50日本時間 金融数量。投資の用途は総額だけで特定不可 [3][8]
マネーストック 9月・10月14日8:50日本時間 通貨保有。預金統計との範囲の差に注意 [3][9]

日本銀行の予定では、10月13日8:50日本時間に9月の企業物価指数と貸出・預金動向が公表されます。同日13:30には第107回の生活意識に関するアンケート調査の結果、翌14日8:50には9月のマネーストックが予定されています。価格、金融機関の貸出し、通貨保有、生活実感を同じ週に読むことができますが、集計対象や性質は異なります。同じ方向に動くことを当然の前提にはしません。[3]

企業物価指数で最初に確かめるのは、国内企業物価と輸出入物価のどれを見ているかです。国内企業物価は国内の企業間で取引される財の価格を扱い、消費者が買う商品やサービス全体の価格指数ではありません。輸入物価を見る場合には円ベースと契約通貨ベースを区別できます。同じ輸入品でも、外貨での価格変化と円に換算した負担の変化が異なる場合があります。[7]

ここから家計の生活費へ移るには、いくつもの段階を通ります。輸入された原料が加工され、流通を経て消費者へ届くまでには、原料以外の費用や販売条件が加わります。国内の企業間価格が上がったとしても、家計向けの価格が同月に同率で上がるという関係ではありません。来週は企業物価を消費者物価の確定的な予告として使うのではなく、費用がどの段階にあるかを整理する材料として読みます。

円ベースと契約通貨ベースの違いは、為替を考える入り口になります。ただし二つの指数の差を、そのまま一日の円相場の変化率に置き換えることはできません。月次の調査と換算、通貨構成、契約の条件があるためです。海外での価格が変わった部分と円換算で変わった部分を区別することには意味がありますが、指数全体から個々の取引の採算を逆算することはできません。[7]

価格が下がることの意味も一つではありません。輸入費用の低下は購入側の負担を軽くする方向に働きますが、販売価格の下落は生産者の収入を減らす場合があります。生産性が改善して価格を下げられる場合と、需要が弱く値下げを迫られる場合では背景が違います。価格だけで企業に良い、家計に良いと断定せず、売れる量と投入する費用を合わせて考えることが必要です。

貸出・預金動向は、国内の民間非金融部門への貸出しなどを集計する金融統計です。貸出しが増えたという観察は、新しい設備投資が同じ分だけ増えたという意味ではありません。運転資金、資金繰りの確保、既存の債務に関する動きなど、借り手の用途を分ける必要があります。集計値から借入れの目的を特定できないときは、金融の量が変わった事実と、その理由についての推測を分離します。[8]

例えば仕入価格が高くなれば、同じ量の在庫を持つにも多くの資金が必要になります。この場合、名目の借入額が増えても、生産や販売の数量が増えているとは限りません。他方で、新たな需要に対応して設備や在庫を増やす場合にも借入れは増え得ます。企業物価と貸出しを並べると、この二つを見分けたいという問いが生まれますが、二つの総計だけで答えが確定するわけではありません。

預金が増える場合にも、使える資金が増えたことと、実際に消費や投資へ回ったことを区別します。預金を保有する主体や保有理由によって、支出へつながる速さは違います。将来の支払いに備える資金も、投資機会を待つ資金も、残高の数字には含まれ得ます。残高の増加を経済全体の積極的な支出意欲と読み替えないことが、金融数量を見る際の基本です。

マネーストックと貸出・預金動向の預金は、集計範囲が同一ではありません。現金を含むか、どの金融機関や保有主体を対象にするかなどが異なり、二つの増減率が一致しなくても直ちに矛盾とはなりません。比較に先立って定義を確認することは、数字の読み間違いを防ぐだけでなく、家計や企業のどの資金を観察しているかを明確にします。[9]

生活意識に関するアンケート調査は、この数量の話とは違う角度から家計を見る機会です。回答者が感じる物価や暮らし向きは、実際の支出額や所得を集計した統計と同じものではありません。日々よく買う品物の値上がりと、支出全体に占める重みも一致するとは限りません。調査結果が出た際は、設問、回答区分、調査時期を確認し、実感の変化を実質所得の変化そのものとして扱わないようにします。

日本の来週の材料を結びつける問いは、「費用の変化を誰が負担し、その負担が支出や資金需要にどう表れるか」です。企業物価は取引価格、貸出しは資金調達の量、マネーストックは保有される通貨の量、アンケートは回答者の認識を示します。互いを置き換えるのではなく、同じ経済過程の別の面を見ていると理解すると、強い数字と弱い数字が併存しても、無理に一つの評価へ押し込めずに済みます。

なお、来週の統計発表と日本銀行の金融政策決定会合は別の日程です。現時点の予定では次回会合は10月29〜30日です。来週の資料は先行きの評価に関わり得ますが、統計発表日に政策決定が行われると取り違えないようにします。政策を理解するためには、一つの統計の増減だけでなく、物価と経済活動の持続性がどう説明されるかを見る必要があります。[3]

3.中国の物価とシンガポールの政策を、同じ結論に急がず読む

中国国家統計局の予定では、9月の消費者物価指数と工業生産者価格指数は10月14日9:30北京時間、日本時間10:30に公表されます。消費者に近い価格と生産者の出荷段階に近い価格を同時に確認できる日です。一方、国民経済の運行状況の発表は10月19日の予定であり、本号の対象週である12〜18日の外です。物価と生産・消費などの活動統計が同じ日にそろう前提は置きません。[4]

この時間差は重要です。物価の結果だけを見た段階では、数量の動きを十分に確認できないことがあります。価格の弱さが見られたとして、それが購入側の費用軽減につながる話なのか、生産側の販売の弱さを表す話なのかは、内訳や後続の活動統計を必要とします。先に出た資料から分かることを述べ、まだ出ていない資料が必要な部分は残しておくことが、見通しを検証可能にする基本です。

消費者物価では、全体の変化と、食品・エネルギーなど変動の大きい項目を区別して考えます。ある品目の価格が供給条件によって大きく動くと、家計の需要全体が変わらなくても総合指数は動きます。一方、幅広い商品やサービスで変化が続くなら、別の説明を検討する必要があります。総合の一つの数値で、すべての家計が同じ変化を経験したと考えないことも大切です。

前年同月比と前月比は、答えている問いが違います。前年同月比は一年前との比較なので、比較対象となる昨年の価格が高かったか低かったかにも左右されます。前月比は直前月からの動きに近いものの、季節や休日の影響を含むかどうかを確かめる必要があります。伸び率が高まったという一文を書く際にも、どちらの比較なのかを明らかにし、季節調整の有無を確認せずに他国の前月比と並べないようにします。

生産者価格は、工業部門の取引価格を理解するための資料です。原材料に近い分野と最終製品に近い分野が同じ動きをするとは限りません。原料が高くても製品へ転嫁できなければ、生産者の費用負担は重くなり得ます。逆に原料が下がっても製品の価格競争が強ければ、利幅の改善が限定される場合があります。生産者価格の総合指数だけを企業収益そのものとして読むことはできません。

中国の価格は域外との貿易を通じてアジアにも関わりますが、中国国内の生産者価格と、相手国が支払う輸入価格は同一ではありません。取引通貨、輸送費、契約、関税や商品構成が間に入るためです。中国の統計で観察した変化を、日本や東南アジアの店頭価格へ直接移すのではなく、どの商品がどの取引を通じて届くのかを確認する必要があります。国際比較では指標の名称が似ていても、対象範囲まで同じとは限りません。

国慶節後の市場では、休場期間に蓄積した材料と新たな統計が重なります。こうした時期の値動きは、一つの発表だけに原因を求めると説明を誤りやすくなります。価格が動いた時刻と、資料が実際に公開された時刻の前後関係も重要です。発表前の動きを発表値への反応と呼ばず、複数の材料が重なるときは、因果関係を確認できる範囲を限定して説明します。

同じ14日には、シンガポール金融管理局の金融政策声明が予定されています。公式予定と政策運営の説明に基づく公表時刻は8:00シンガポール時間、日本時間9:00です。したがって予定どおりなら、中国の物価発表より先に声明が出ます。同日というだけで、シンガポールの政策判断が、その後に発表される中国の9月物価の確定値への反応だと説明することはできません。[6][10]

シンガポールの政策を読む際は、政策金利を何ポイント変更したかという形式をそのまま当てはめないことが重要です。金融管理局はシンガポールドルの名目実効為替レートの政策バンドを用いる枠組みを採っています。複数の貿易相手との関係を反映する実効為替レートと、米ドルや円に対する一つの通貨ペアの値動きは異なります。対米ドルで動いた方向だけから、政策バンドの変更を判定しないようにします。[11]

声明で説明される政策バンドの傾き、幅、中心の水準は、それぞれ別の要素です。傾きは時間とともに許容される経路、幅はその周囲の変動範囲、中心は基準となる位置に関わります。これは制度を読むための区別であり、今回どの要素が変更されるかを予測したものではありません。発表前には決定を断定せず、発表後も声明の表現を確認して、実際に変わった部分と維持された部分を分けます。[11]

中国とシンガポールの資料を並べる価値は、両国を同じ政策方向に分類することではありません。中国の物価は企業や家計が経験した価格の情報を増やし、シンガポールの声明は開放経済が物価と成長をどう評価するかを示します。統計と政策判断は役割が違います。来週の解説では、先に公表された判断と後から判明した事実を順に並べることで、読者がどの時点で何を知り得たのかを見失わないようにします。

4.豪州雇用と米国物価を、アジアの一日の中に置き直す

豪州統計局は、9月の労働力調査を10月15日11:30キャンベラ時間で公表する予定です。この時期は豪州東部夏時間で、日本時間では同日9:30に当たります。雇用、失業、労働参加、労働時間、不完全就業などを扱う資料であり、失業率という一つの数字だけを見る発表ではありません。来週のアジアの朝には、前夜の米国物価の情報と豪州の新しい雇用情報が重なる時間帯があります。[5]

失業率の分母は労働力人口です。仕事に就いている人だけでなく、失業して仕事を探す人を含むため、人口全体に占める無職の人の割合とは異なります。失業率が下がるときにも、就業者が増えたのか、労働力人口から退出した人が増えたのかで意味が変わります。このため、雇用者数と参加率を一緒に読むことが欠かせません。[12]

人数だけでは、働いている量も分かりません。就業者数が保たれていても、一人当たりの労働時間や総労働時間が減れば、仕事の投入量は別の動きをしている可能性があります。逆に人数の増加が小さくても、労働時間が増えていれば、既存の働き手の稼働が増している場合があります。人数、時間、十分に働けているかという指標を分けると、雇用の状態をより具体的に理解できます。[12]

雇用の増減を家計消費につなげる際にも、段階があります。仕事の数や時間は労働所得と関係しますが、賃金単価、税負担、物価、世帯の構成によって、実際の購買力は変わります。したがって雇用者が増えたという結果だけで、実質消費が同じ強さで増えると決めることはできません。労働力調査から読み取れる雇用の情報と、別の統計で確認する所得や支出を分けて扱います。

月次の雇用統計には標本調査としての変動もあります。ある月の小さな動きを長期の転換と呼ぶには、過去の推移や改定、関連する指標を確認する必要があります。季節調整済みの系列と原系列を混ぜたり、前月に公表された値と今回改定された前月値を混同したりしないことも重要です。最新の表に示される比較対象を確かめることで、変化の大きさを過大に見せることを防ぎます。

米国では、9月の消費者物価指数と実質所得が14日8:30米東部時間、9月の生産者物価指数が15日8:30、9月の輸出入物価が16日8:30に予定されています。この週の米東部時間は夏時間で、いずれも日本時間21:30です。東京の通常の現物取引が終わった後の発表なので、その日の東京現物終値が、まだ公表されていない米国の確定値を反映したと説明することはできません。[13]

消費者物価は消費者が購入する財やサービスの価格変化を測るものです。生産者物価は生産者側からの価格を扱い、対象範囲や重みづけが異なります。輸出入物価は国境を越える取引の価格を観察します。三つが同じ週に出るからといって、単純に足したり平均したりして一つの物価率を作ることはできません。どこで価格変化が起きているのかを区別するために使います。[14][15]

とりわけ生産者物価を消費者物価の単純な先行指標とする説明には留保が必要です。最終需要の範囲やサービスの扱いなどが違い、消費者が直接購入しない取引も関わります。ある月の二つの指数が異なる方向へ動いても、直ちにどちらかが誤っているとはなりません。対象と段階の違いを確認してから、費用と販売価格の関係を考えます。[15]

アジアにとって米国物価を見る理由は、米国の家計の状態だけではありません。物価の情報が政策見通しや国際的な金融条件の評価に関われば、通貨や資金調達費用を通じてアジアの経済にも影響し得ます。ただし、発表値から通貨の方向を一意に決めることはできません。事前の予想、同時に出た内訳、他のニュース、すでに価格へ織り込まれた見方があるためです。

来週の時刻を順に並べると、14日朝のシンガポール政策と中国物価、同日夜の米国消費者物価、15日朝の豪州雇用、同日夜の米国生産者物価という流れになります。同じ「15日のアジア市場」でも、開始時点で利用可能な米国情報と、その途中で加わる豪州情報は違います。日付だけで材料を束ねず、発表順序を残すことが、その日の説明を正確にする助けになります。

16日夜の米国輸出入物価は、東京現物市場にとっては週末をまたぐ材料になります。そこで形成される見方が、次の営業日の取引とどう結びつくかは別に確認する必要があります。週の見通しを18日までとすることは、18日に東京の現物終値が存在するという意味ではありません。カレンダー上の一週間と、現物市場が実際に価格をつける日を区別しておくと、週末のニュースと市場の反応を混同せずに済みます。

5.発表を点で終わらせないための、来週の読み方

来週の資料を結びつける最初の問いは、価格の変化がどの取引段階で起きたかです。日本の企業物価、中国の消費者・生産者物価、米国の消費者・生産者・輸出入物価は、似た名称でも同じ対象を測ってはいません。国内の価格と国際取引の価格、企業が受け取る価格と家計が支払う価格を分けることで、一見食い違う数字を無理に矛盾として扱うことを避けられます。

第二の問いは、その価格の背後にある数量をどこで確認できるかです。販売額が増えたことと販売量が増えたこと、貸出額が増えたことと設備投資が増えたことは、同じではありません。価格の資料から数量の答えが出ないときは、分からないという状態を保ったまま、次に必要な資料を示します。今週のすべての発表がそろっても、翌週以降の生産・販売統計を待たなければ判断できない論点は残ります。

第三の問いは、家計へ届く所得と負担の関係です。企業の価格が高くなった場合、売上げが増える一方で仕入れや人件費も増えていれば、利益や賃金へ回る余地は数字だけでは分かりません。雇用が増えた場合も、労働時間や物価次第で購買力の変化は異なります。家計の実感、雇用の量、費用の変化をそれぞれ別の窓として見ていくことが、景気の広がりを理解する土台になります。

決算シーズンに関する論点も、同じ視点で整理できます。本号では個別企業名や銘柄、個別の決算予定や業績予想には踏み込みません。業種・地域全体を見る場合には、名目売上げと数量、販売価格と投入費用、利益と現金の回収、在庫と最終販売を区別します。例えば売上げが増えたという集計でも、価格の上昇による部分が大きいのか、需要の量が増えたのかで、経済への意味は変わります。

利益と現金の違いも、経済指標をつなぐうえで重要です。売上げとして認識されても、代金を受け取るまで時間がかかる場合があります。仕入れや賃金の支払いが先に来るなら、資金需要は収益の増加と同時に強まることがあります。このような関係を知っておくと、貸出しの増加を見たときに、好況だからか不況だからかという二択だけで考えずに済みます。

来週の資料を読む順序は、まず対象期間と定義、次に実際の結果と内訳、その後に他の資料との関係です。見出しの数値だけで先に結論を決めると、後から出てきた内訳を都合よく選びやすくなります。例えば総合指数と一部品目が違う方向へ動いているなら、その違い自体が説明すべき内容です。平均的な変化が、どの分野にも同じ強さで及んだとは限りません。

速報と改定も、発表をつなぐ際の要点です。前回見た表の数字が今回変わっている場合、当月の新しい結果だけでなく、過去の比較対象も変わっています。前月との差を計算するなら、同じ公表時点の系列を使うのが基本です。古い前月値と新しい当月値を混ぜると、変化を誤って大きくしたり小さくしたりするおそれがあります。

国をまたいで数字を比べる場合は、季節調整、税や補助の扱い、品目の重み、基準年なども確認します。数値が近いから同じ経済状態というわけではなく、数値が違うから必ず需要の強さが違うわけでもありません。とくに消費者物価の総合と、特定項目を除いた指数では含まれる範囲が違います。「コア」という言葉だけをそろえて、国ごとの定義を省略する比較は避けます。

政策声明の読み方では、決定内容と経済認識を分けます。政策を維持したことは、経済の評価が何も変わっていないことを意味するとは限りません。反対に説明の表現が変わっても、政策手段の設定自体は維持される場合があります。シンガポールの声明では、実際の設定に関する記述と、物価・成長の評価に関する記述を分けて読み、他国の政策用語へ無理に置き換えないことが大切です。

週明けの東京休場も、情報の比較に関わります。日本の価格が更新されない間に他地域で価格が動けば、比較する終値の対象日が異なる状態になります。それを同じ日の成績表として扱うと、反応した情報の範囲がそろいません。市場の広がりを見る場合にも、時点をそろえられない数字はその違いを明記し、閉じている市場が動かなかったことを経済の安定の証拠とはしません。

来週は一つの発表でアジア全体を説明する週ではなく、価格、雇用、金融数量、政策の情報を順に足していく週です。日本の費用と資金の関係、中国の物価の内訳、豪州の人数と時間、シンガポールの政策の説明を、米国の夜間発表と区別して整理します。見通しの価値は結果を先に言い切ることだけにあるのではなく、結果が出たときに、何が分かり、何がまだ分からないかを読者が判断できる形にしておくことにもあります。

発表後の記録では、「資料が示した事実」と「その事実から考えられる説明」を別々に残すと、後日の見直しがしやすくなります。例えば物価の伸びが鈍化したことは観測ですが、それを需要の弱さと説明するには別の根拠が必要です。逆に、後から数量が堅調だと分かれば、最初の説明を修正する余地があります。見通しを固定した結論として守るのではなく、新しい資料に応じて説明を更新する姿勢が、日々の発表を一週間の理解へつなぎます。

本日の市場の要点

10月12〜18日は、価格と需要を分けて読む週です。日本の金融数量、中国の物価、豪州の雇用、シンガポールの政策を、米国の夜間発表と時点を区別して結びつけます。

関連する今週の解説

無料部分の参考資料

  1. 日本取引所グループ:営業時間・休業日一覧
  2. 上海証券取引所:2026年休市安排
  3. 日本銀行:公表予定(10月9日更新)
  4. 中国国家統計局:2026年主要統計発表日程
  5. 豪州統計局:2026年10月労働統計発表予定
  6. シンガポール金融管理局:発表予定
  7. 日本銀行:2020年基準企業物価指数のFAQ
  8. 日本銀行:貸出・預金動向の解説
  9. 日本銀行:マネーストック統計のFAQ
  10. シンガポール金融管理局:金融政策の実施方法
  11. シンガポール金融管理局:金融政策の枠組みと理由
  12. 豪州統計局:労働力統計の枠組み
  13. 米労働統計局:2026年発表予定
  14. 米労働統計局:消費者物価指数FAQ
  15. 米労働統計局:生産者物価指数FAQ

参照日:2026年10月11日。公表日程は確認時点の予定です。本号では未発表値を予想値として作成していません。

本記事は一般情報・教育目的であり、個別金融商品の売買や保有の推奨、投資助言、勧誘ではありません。条件付きの見解には不確実性があり、統計は改定されることがあります。

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