SG Group | アジア週末レビュー
企業の回復は、どこまで家計と地域へ届くか
対象週:2026年10月5〜9日。情報基準:10月10日12:00日本時間。東京の最新完了取引日:10月9日。本日は週末休場で当日の現物終値はありません。
1.休場の週末に、アジアの「回復」を読み直す
10月10日
週末休場・当日終値なし [1]
10月5〜9日
統計の公表日と対象期間を区別
本号は2026年10月5〜9日の材料を振り返る10月10日号です。情報基準日は10月10日正午の日本時間で、東京の最新完了取引日は10月9日です。本日は土曜日のため東京現物市場の当日終値はありません。中国本土も10月10日を週末休場と明記しています。行政上の振替出勤と証券取引所の営業日は別であり、仕事のある土曜日だから株式も取引されるとは限りません。[1][2]
最新の東京現物終値は日経平均69,030.92円、前日比11.19円安、TOPIXは4,104.81、同13.35ポイント高でした。日経平均は指数運営者の記録と証券会社の大引け解説、TOPIXは証券会社の記録と別配信の市場ダイジェストで一致しています。いずれも10月9日の値であり、土曜日に更新された先物の夜間価格とは区別します。指数が反対方向へ動いた点が、週末に整理する出発点です。[3][4][5]
一つの指数は、市場全体をそのまま縮めた写真ではありません。構成銘柄、重み付け、価格変化の集計方法によって、同じ市場を違う角度から示します。TOPIXは浮動株時価総額加重型です。大きな企業の動きが強く反映されますが、それでも日経平均とは構成や計算方式が異なります。指数の上昇と家計の暮らし向きの改善を直接同一視することもできません。[6]
岩井コスモ証券の概算では、9日の東証プライムは値上がり1,194銘柄、値下がり331銘柄、変わらず27銘柄でした。日経平均が小幅安でも、個別銘柄の数では上昇が広がっていたことになります。ただし、一銘柄一票の騰落数は時価総額や売買金額を反映しません。広がりを確認する材料であって、指数を訂正する別の正解ではありません。[4]
今週の日本経済には、企業の状況、家計の支出、海外からの所得という別々の観測窓がありました。日銀の地域経済報告、総務省の家計調査、財務省の国際収支を同じ「景気」の一語へ押し込むと、実際には異なる時点と対象を混ぜてしまいます。株価は将来の利益を含む期待を反映する一方、月次統計は過去の行動を集計します。先に見るべきなのは、どの経済主体の、いつの動きかという違いです。[7][8][9]
たとえば企業の設備更新は、人手不足への対応や既存設備の交換でも起こります。家計の購入数量が同時に増えなくても、企業が仕事を続けるために必要な支出を行うことは可能です。逆に、店頭売上が増えていても、値上げの影響だけで数量は減っている場合があります。売上金額、販売数量、利益、設備投資は互いに関連していますが、どれか一つを確認すれば残りが分かる関係ではありません。
地域を見る場合も、工場のある場所、企業の本社、製品の最終購入者、利益の受取人は一致しないことがあります。日本の会社が海外で稼いだ利益は日本の企業業績に寄与し得ますが、国内で同じ規模の消費が発生したことにはなりません。この地理的な違いを意識すると、海外需要に関わる株式の動きと、国内の小売やサービスの統計が違う方向を示しても、それだけでは矛盾とはいえません。
週末は価格の更新が止まりますが、先週の情報の意味まで固定されるわけではありません。複数の統計を並べることで、企業の景況感と家計の支出の隔たり、製造業とサービス業の差、国内取引と海外所得の違いが見えてきます。本号の無料部分では、この違いを理解するための事実と金融の仕組みを整理します。個別商品の売買判断へ置き換えるのではなく、次の発表を読み違えないための見取り図として扱います。
「回復」という言葉には、水準が以前の落ち込みから戻ること、前の月より増えること、前年より増えることなど複数の意味があります。前月比がプラスで前年比がマイナスなら、改善の兆しと低い水準が同時に存在し得ます。さらに名目金額と物価を考慮した実質値でも方向が変わります。数字の符号だけを比べる前に、比較対象と物価調整を確認すると、強弱を一色に塗らずに状況を説明できます。
アジアという地域名も、共通の取引日や共通の産業構成を意味しません。日本が次の祝日に向かう一方、中国本土は国慶節の連休明けです。台湾と韓国は9日が祝日で、香港は別の営業日程です。こうした違いを無視して最終表示値を横並びにすると、一方は新しい情報を織り込み、他方は休場前のままという比較になります。今週の振り返りでは、順位付けよりもまず情報の時点をそろえることが重要です。
指数の比較では配当の扱いもあります。株価だけの指数と、配当を再投資したと仮定する指数では、同じ期間の結果が違います。さらに、指数の構成変更があっても、通常は連続性を保つよう計算上の調整が行われます。そのため、指数の値が変わった分を、上場企業全体の利益が同じ割合で増減したと読むことはできません。集計された価格情報として何を示すかを理解したうえで、利益や売上の統計を別に見る必要があります。今週の東京の二指数の方向差も、単一企業の動きと市場の広がりを分けて考える入口になります。
2.日本の統計を、家計・企業・海外所得に分ける
表は必要に応じて横に動かせます。
| 資料 | 対象と公表 | 確認できた事実 |
|---|---|---|
| 家計調査 | 8月・10月9日公表 | 実質消費支出:前年比−3.1%、季調済み前月比+0.1% [8] |
| 国際収支 | 8月・10月8日速報 | 経常黒字4兆620億円、貿易・サービス赤字8,035億円 [9] |
| 短観 | 9月・10月1日公表 | 大企業製造業DI24、非製造業DI35 [10] |
10月9日公表の8月家計調査では、二人以上世帯の消費支出は一世帯当たり310,975円でした。前年同月比は名目1.0%減、実質3.1%減で、季節調整後の実質前月比は0.1%増です。同じ資料の中に減少と増加が並びますが、比較する期間が違います。前月からの小幅な増加だけで前年の水準を回復したとはいえず、前年比の減少だけで足元も毎月悪化しているとはいえません。[8]
家計の支出金額は、購入する量と価格の組合せで決まります。同じ品目の値段が高くなれば、数量が減っても支払額が維持されることがあります。実質値はこの価格変化を取り除こうとする指標ですが、個々の家庭の買物内容を完全に再現したものではありません。また、二人以上の世帯という対象を、単身世帯を含む全世帯の状態と読み替えることはできません。世帯構成の違いは、住居費、食費、耐久財購入の構成にも影響します。
勤労者世帯の実収入と、二人以上世帯全体の消費支出をそのまま割って貯蓄率を作ることも適切ではありません。集計対象が違ううえ、税や社会保険料を引く前後の所得も区別する必要があります。家計が自由に使えるお金を考えるなら可処分所得が関連し、企業の賃金統計とは対象や集計単位が違います。「収入が増えたのに支出が弱い」という説明は、同じ集団の同じ期間を確認して初めて説得力を持ちます。
10月8日の財務省速報では、8月の経常収支は4兆620億円の黒字でした。一方、貿易・サービス収支は8,035億円の赤字で、第一次所得収支が5兆1,332億円の黒字でした。輸出額の増加率16.9%に対して輸入額は26.7%増です。経常黒字という総額と、財やサービスの取引の収支は違う姿を示しています。この内訳は、黒字を単純な輸出競争力の強さだけで説明できないことを教えます。[9]
第一次所得には、海外への投資から得られる配当や利子などが含まれます。これは国内の工場がその月に生産した財の輸出とは違います。また、統計上の所得発生と、企業が実際に外貨を円へ交換する時点は必ずしも一致しません。黒字が大きいという理由だけで、その月に同額の円買いが起きたと結論付けることはできません。為替の説明には資金の通貨、受取時点、再投資、資金調達などを追加して考える必要があります。
日銀の9月短観は10月1日公表で、大企業製造業の業況判断DIは24、非製造業は35でした。6月からは製造業が2ポイント改善し、非製造業は2ポイント低下しています。12月までの先行きはそれぞれ21と30です。これらは「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた値で、売上の増加率ではありません。前回からの変化、現在の水準、回答時点の見通しを分けて読む必要があります。[10]
企業調査には先行きを考える手掛かりがありますが、計画は実績ではありません。設備投資の予算があっても、工事の遅れ、機械の納期、人員確保、資材価格によって支出の時期はずれます。同じ金額の計画でも、物価が上がっていれば導入できる設備の量は以前より少ない可能性があります。企業の意欲と、実際の生産能力の増加を結び付ける際には、この実行段階を省略できません。
10月8日の地域経済報告は、一部の弱めの動きにも触れながら、各地域を緩やかな回復や持ち直しとする総括でした。ただし、地域の総括判断は一つの全国月次数量ではありません。幅広い聞き取りを含む景気の描写と、特定の世帯を対象にした消費調査では、拾う変化が違います。両者をどちらか一方が誤りと決め付けるより、企業側の生産や投資と家計側の購入行動を分ける方が有用です。[7]
統計の公表日は新しくても、対象月は前にあります。10月のニュースとして読んでいる8月の支出は、10月初旬の店頭の状況を直接測ってはいません。短観も回答期間のある調査です。週末に複数の発表を整理するときは、発表日で時系列に並べるだけでなく、対象期間も併記することが大切です。これにより、ある出来事が起きる前のデータを、その出来事の結果として説明してしまう誤りを避けられます。
ここまでの資料から確実にいえるのは、日本経済が一つの指標で表せないということです。家計の数量面、企業の判断、海外所得という異なる側面が同時に存在します。関連する日々の市場の経過は前日号で、地域をまたぐ金融の読み方は別の解説で参照できます。本号ではそれらを再掲するのではなく、今週の材料を主体別に置き直し、数字が何を測っていて何を測っていないかを説明します。
家計統計は平均値であることにも意味があります。高額な耐久財を購入した世帯と、日常の支出を抑えた世帯が一つの平均に入ります。平均支出が下がってもすべての家庭が同じ割合で減らしたわけではなく、平均が上がっても負担を感じる世帯がなくなったわけではありません。所得や年齢などによる内訳が、同じ母集団と定義で確認できるなら、平均の背後を理解する助けになります。ただし、標本の小さい内訳ほど変動しやすく、細かく分ければ必ず正確になるわけではないことにも注意が必要です。
3.中国の連休明けと、地域をつなぐ注文の流れ
上海証券取引所の2026年の日程では、国慶節は10月1〜7日が休場で、8日に通常取引を再開しました。10日は週末休場です。今週の中国本土株には連休を挟んだ情報の集積があり、日本や香港と同じ日数の取引を経たわけではありません。休場明けの価格変化は、その日だけの経済状況というより、休場中に発生した国内外の情報をまとめて反映している可能性があります。[2]
9月の中国公式製造業PMIは50.1で、8月から0.3ポイント上昇しました。生産指数は51.7、新規受注は50.5で、生産は前月から1.3ポイント上がり、受注は0.1ポイント下がっています。大企業50.6に対して中型企業49.7、小型企業48.9という規模差もありました。総合的な改善の表現と、需要や企業規模のばらつきは両立します。[11]
PMIは回答企業の改善・悪化の広がりを測る指標です。50を超えたから生産量が同じ割合で増えたという意味ではありません。生産を増やした企業が多くても、その増加量や企業規模によって実際の総生産は変わります。わずかな境目の上下だけに大きな意味を持たせず、受注、生産、在庫、雇用などの関係を見ることで、企業活動のどの段階が動いているかを理解しやすくなります。
受注から最終消費までには、原料購入、加工、輸送、倉庫保管、店頭販売という段階があります。ある段階の数量が増えても、後の段階の需要が同じように増えたとは限りません。販売店が欠品を避けるために在庫を積む場合、製造業への注文が一時的に強くなることがあります。逆に、在庫を減らして販売している間は、消費が保たれていても工場への新規注文が弱く見える場合があります。
企業間取引では、注文の発注と代金の回収の間にも時間があります。売上が計上されても入金が後なら、その間の材料費や人件費を賄う必要があります。運転資金が増える局面では、利益率だけでなく在庫や売掛金の回転が重要になります。これは特定企業の資金不足を示す話ではなく、連休後に生産と受注の関係を読むための基本的な仕組みです。売上の増加を、そのまま現金の増加と扱わないことが出発点になります。
日本、韓国、台湾の企業が中国と取引するときも、最終需要の所在は一つではありません。中国向けの部材が現地の消費財に使われる場合と、第三国へ輸出する製品に組み込まれる場合では、需要を左右する経済が違います。出荷先の国だけで需要を分類すると、米国や欧州の購入動向がアジアの企業へ届く経路を見落とします。輸出の金額を見る際にも、部材か完成品か、数量か単価かを区別することが大切です。
同じ理由で、香港と中国本土の株価指数を代用関係として扱うこともできません。上場企業の構成や通貨、参加者が異なり、連休の営業日程も違います。香港の市場が開いている間に起きた変化を、本土市場が休場していた日の終値として説明してはいけません。二つの市場を比較することには意味がありますが、価格の差を直ちに同じ企業の評価差や裁定機会に置き換えるには別の条件の確認が必要です。[12]
台湾は10月10日の国慶日が土曜日に当たるため、9日が振替休日となりました。韓国の9日はハングルの日です。韓国取引所は祝日と土曜日を休場とする通常規則があり、両市場の最新完了取引日は日本とずれます。10日の週末比較で、台湾や韓国の画面に残る数字を9日の取引結果として並べることは適切ではありません。ここでは未更新の指数を現在の値に見せることなく、地域の営業日差を整理します。[13][14][15]
資源を扱う豪州、金融や物流の機能を持つシンガポール、国内需要も大きいインドには、それぞれ異なる経済構造があります。地域全体を半導体だけで説明すると、燃料を買う側と資源を売る側、外貨の売上を得る側と外貨で負債を返す側の違いが消えてしまいます。今週の週末解説は、すべての国の最新指数を列挙する代わりに、需要、供給、資金の役割を分け、地域をつなぐ仕組みに焦点を当てます。
中国の調査が改善しても、それだけでアジア全体の最終需要が同じ速度で回復したとはいえません。生産を増やす企業の数、最終購入者の支出、輸送される物量、支払期限の長さは別の情報です。地域の強弱を説明する言葉として「連休明けの回復」を使うなら、再開した取引そのものと、実体経済の改善を混同しないことが必要です。営業再開は確定した日程ですが、その後の需要の持続性は観測していく対象です。
貿易の金額を共通通貨へ換算する際には、実際に取引された量が変わらなくても為替によって表示額が動きます。輸出単価が上がる場合も、品質の高い製品への構成変化と、同じ製品の値上げは違います。こうした違いは、サプライチェーンのどこで付加価値が増えたかを考える際に重要です。部材の輸出増だけを最終消費者の需要増と呼ばず、製品構成や加工段階を確かめることで、地域間の統計の見かけの食い違いを説明しやすくなります。
4.日程の違いを、情報の時系列に置き換える
今週を時系列で見ると、10月8日に日本の地域経済報告と8月国際収支が公表され、9日に8月家計調査が出ました。中国本土市場は8日に連休明けの取引を再開し、台湾と韓国は9日が休場でした。これらは同じ週に起きたことでも、経済活動の対象期間や価格へ反映される順序が異なります。週のニュースを一本の因果の鎖へ並べる前に、日程と統計の対象を分けて確認することが欠かせません。[2][7][8][9][13][14]
本日10月10日は主要なアジア現物市場の通常の週末に当たります。香港は月曜から金曜、インドの通常株式取引も土日を除く日程です。豪州の営業日定義、シンガポールの市場日定義も週末を除いています。本号は新しい土曜日の現物終値を待つ号ではなく、10月5〜9日の情報を整理する週末版です。為替や先物の画面に値が表示されていても、それを本日の現物株式の取引と扱うことはありません。[12][16][17][18]
東京現物市場は10月12日もスポーツの日で休場です。一方、日本のデリバティブには祝日取引があり、現物市場と同じ日程とは限りません。先物が動く日に現物株が休んでいることは、制度として不自然ではありません。その価格は将来の受渡しや金利、配当なども関係する別の商品です。先物の変化を読む場合には、取引日、限月、昼間か夜間かを確かめたうえで、現物終値とは別欄に置く必要があります。[1][19]
取引が止まっていても、企業の営業やニュースの発生まで止まるわけではありません。休日中の出来事が次の取引日にまとめて価格へ反映されることがあります。ただし、休日を挟むから必ず大きな値動きになるわけではなく、情報の重要性、事前の予想、他の市場での評価などによって反応は変わります。営業日の不一致は情報の遅れを生みますが、値動きの方向を自動的に決める仕組みではありません。
発表予定の読み方でも、現地時間と日本時間を分ける必要があります。海外の金曜午後は日本では土曜日になることがあり、日本の暦で同じ日付の記事でも観測している市場日が違います。夏時間の有無も影響します。指数の更新時刻だけでなく、どの取引日の終値なのかを確認することで、前日値、時間外取引、現物市場の確定値を混ぜずに済みます。日付は単なる見出しの装飾ではなく、数字の定義の一部です。
経済統計には改定もあります。速報は迅速に状況を把握するために役立ちますが、追加資料や季節調整の更新によって値が変わることがあります。前回発表時の値と、今回の資料に載る改定後の過去値を混在させると、変化の幅を誤って計算する可能性があります。月次データの比較は同じ公表回の系列で行うのが基本であり、過去の記事に掲載された数値を使う場合は当時の公表値であることを意識する必要があります。
また、毎月の変化には季節性があります。長期休暇、賞与、学期、天候などによって、同じ月でも支出や生産の構成が動きます。季節調整はこうした繰り返しの影響を取り除こうとする方法ですが、すべての特殊要因を消すものではありません。前年比なら季節性の問題が完全になくなるわけでもなく、前年の一時的な落ち込みが比較の基準になることがあります。短い系列だけで構造変化と判断しない理由はここにあります。
国をまたぐ週間比較では、同じ営業日数に直すだけでも不十分です。各市場の時差があり、米国の引け後に出た情報を既に織り込む市場と、まだ織り込んでいない市場があります。現地通貨建てと共通通貨建てでも見え方が変わります。ここで必要なのは、どの基準が唯一正しいかという議論より、比較の目的に合う基準を明示することです。企業の収益を見るのか、国内購買力を見るのかによって、関係する通貨も異なります。
週末の振り返りで役立つのは、出来事を多く並べることより、先後関係を確かめることです。ある統計の対象月より後に起きた政策を、その統計の原因とは呼べません。企業が予想して先に行動した可能性はありますが、その場合には予想の存在を示す別の根拠が必要です。確認された出来事、当事者の説明、筆者の解釈を分けることで、ニュースの見出しをつないだだけの物語から一歩離れられます。
次週へ持ち越すのは、決まった株価の結論ではなく、照合すべき関係です。家計の支出と企業の販売、受注と生産、海外所得と国内で使われる資金、休場前後の情報差を、それぞれ別の時系列として追います。日程の確認は地味に見えますが、国ごとに休日がずれる今週末には特に重要です。対象期間を正しく置くだけで、強い数字と弱い数字が共存する理由の多くを説明できます。
休日の確認は取引だけでなく決済にも関係します。売買契約が成立する日と、現金や証券を受け渡す日は別です。二つの通貨のどちらかの金融機関が休む場合、資金を用意する日程にも違いが生じます。ここでは個別契約の決済日を示しているわけではありませんが、ニュースの営業日を一つの国の暦だけで判断しない理由になります。市場価格が動くこと、銀行が決済できること、企業が通常営業していることは、それぞれ別の確認事項です。
5.無料解説のまとめ――強弱を一つの物語にしない
今週の事実を読むためには、三つの区別が役立ちます。第一は、価格と実体経済の区別です。株価の変化は将来の利益や割引率への期待も含むため、その日の家計消費を直接表すものではありません。第二は、金額と数量の区別です。値上げで売上が増える場合と、購入量が増える場合では経済の意味が違います。第三は、現在の観測と将来の条件です。先行きの回答や計画は、後で実現するかを確認する対象になります。
指数が強い一方で家計の実質支出が弱いという組合せは、海外利益のある企業、価格を転嫁できる企業、生活費の負担を受ける世帯が同じ集計に入っていないことからも生じます。これは市場が必ず間違っているという証明でも、家計統計が役に立たないという証明でもありません。異なる主体の数字が違うことを認めると、景気の説明を「良いか悪いか」の二択から、どこに改善があり、どこに負担が残るかへ変えられます。
消費の数量が回復するという状態は、支払額が増えるだけでは十分に表せません。同じ予算で買える量が増える、あるいは所得の増加によって購入を増やせるなど、購買力の変化が必要です。一方、企業の設備支出が増える状態は、生産性の向上や供給力の維持に結び付く可能性がありますが、家計への波及には賃金や価格、雇用を通る時間がかかります。短期間の数字のずれを、即座に長期的な不整合と考える必要はありません。
中国の製造業指標についても、生産が先に動く場合と最終需要が先に動く場合を分けて理解できます。前者では在庫や納期の調整が入り、後者では販売から補充注文へ流れが伝わります。どちらも起こり得る仕組みですが、PMI一つで在庫の適正水準や利益の持続性が分かるわけではありません。改善という言葉の後に、何が改善したのかを一言加えるだけでも、経済の話はかなり正確になります。
金利の役割も単純ではありません。借入のある企業には支払利息として影響し、預金や債券を持つ主体には受取利息として影響します。既存の固定金利契約と、新しく資金を借りる契約では反映の速度が違います。金利が高いという共通条件があっても、企業ごとの資金繰りや家計の所得への影響は均一ではありません。政策金利、長期金利、実際の借入金利を同じ数字のように扱わないことも重要です。
為替には輸出と輸入の両面があります。自国通貨が安くなると外貨売上を換算した金額が増えることがありますが、輸入原材料や外貨建て支払の負担も増え得ます。契約通貨や価格改定、為替予約によって影響は遅れたり緩和されたりします。したがって、円安を日本企業全体の利益増加と断定する説明も、円高を日本経済全体の悪化と断定する説明も広すぎます。どの収入と費用を比べているのかが必要です。
地域間の違いを見るときには、資源を生産する地域、加工する地域、完成品を購入する地域の役割が重なっていることにも注意します。一つの国がすべてについて輸出側、または輸入側であるとは限りません。燃料価格の変化は、資源企業の売上、製造業の費用、物流の料金、家計の支払へ別々の速度で届きます。アジアの景気を理解するための地域比較は、単なる指数の上昇率の一覧以上のものになります。
本日の市場の要点は、休場を静止画として扱いながら、その背後の経済活動を分解することです。東京の最新完了値を基準にする場合にも、日本と他の市場の取引日が一致するとは限りません。企業の改善と家計の弱さ、海外所得の黒字と財・サービス取引の赤字は同時に存在し得ます。一つの好材料で他の弱さを打ち消したり、一つの弱い統計ですべての企業活動を否定したりしない読み方が求められます。
ここで説明した経路は、一般的な金融と経済の仕組みです。企業の具体的な契約、家計の所得構成、各国の政策対応によって実際の強さは変わります。今回の週末版は、特定の将来価格を示すものではなく、今週公表された情報をどう位置付けるかを扱っています。数値は対象日を伴う記録であり、後から出る改定や追加情報によって経済の評価が変わる余地を残しています。
市場を見るうえで、分からないことを分かったように埋めない姿勢も大切です。価格の反応から単一の原因を断定したり、未公表の販売数量を推計と明示せずに語ったりすると、説明は読みやすくても信頼性を失います。今週確認できた事実を土台に、どの主体にどの負担や機会があるのかを整理することが、次のニュースを理解する準備になります。無料解説はこの共通の土台までを扱います。
消費、生産、所得のような一定期間の流れと、在庫、資産、負債のようなある時点の残高を分けることも基本です。利益が出ていても手元資金が減ることがあり、借入残高が変わらなくても借換えの条件が変わることがあります。流れの数字だけを見ると、企業が一時的な変動を吸収する余力を見落とします。逆に残高だけでは、毎月どれだけ資金が入ってくるかは分かりません。週末の整理では、活動の勢いと、それを支える蓄積を別々に捉えると理解が深まります。
本日の市場の要点
価格、数量、所得の違いを分けると、企業の改善と家計の負担が共存する理由が見えてきます。休場日の価格は最新完了取引日の記録として読みます。
関連する今週の解説
無料部分の参考資料
- JPX:市場休業日
- 上海証券取引所:2026年休市安排
- 日経平均:2026年10月9日日次サマリー
- 岩井コスモ証券:10月9日大引け
- OANDA掲載:東京マーケットダイジェスト・9日
- JPX:TOPIXの定義
- 日本銀行:地域経済報告2026年10月
- 総務省統計局:2026年8月家計調査
- 財務省:2026年8月国際収支速報
- 日本銀行:2026年9月短観要旨
- 中国国家統計局:2026年9月PMI
- HKEX:証券市場の取引時間
- 台湾証券取引所:休市日程
- 韓国銀行:2026年祝日
- 韓国取引所:取引時間・休日
- NSE:取引時間・休日
- ASX:営業日の定義
- SGX掲載:市場日の定義
- JPX:祝日取引
参照日:2026年10月10日。相場数値は10月9日の現物終値です。
本記事は一般情報・教育目的であり、個別金融商品の売買や保有の推奨、投資助言、勧誘ではありません。条件付きの見解には不確実性があり、統計は改定されることがあります。
分析・解説
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