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複数ポジションの合算リスク計算|相関・通貨偏り・証拠金をまとめて管理する

複数ポジションの合算リスク計算|相関・通貨偏り・証拠金をまとめて管理する | SG Group

Learn — ロット計算シリーズ 09

複数ポジションの合算リスク計算|相関・通貨偏り・証拠金をまとめて管理する

複数のFX・CFDを同時に持つと、1取引ごとのリスク計算だけでは全体像が見えません。まず各損切り損失を口座通貨で合計してgross open riskを出し、そこから通貨・指数の共通因子、方向、相関、同時ストップ、証拠金の合算まで分解します。本記事は、個別1%でも合計3%になる架空ケースを軸に、複数ポジションのリスク計算を単位付きで整理し、無料ロット計算機での確認手順と複数ポジション分析の考え方をつなぎます。

  • 各損切り損失を口座通貨で合計しgross open riskを出す
  • 通貨・指数への偏り(net/gross exposure)を集計する
  • 相関は固定値ではないと理解し単純合算から自動減額しない
  • 必要証拠金と余剰証拠金を合算で確認する
読了目安約13分
更新日2026年7月14日
対象複数銘柄を同時保有する人
種別教育・記述的な解説

この記事の要点

  • gross open risk=各ポジションの損切り想定損失を口座通貨へ換算して単純合計したもの。最悪時の損失予算を見る出発点。
  • 単純合計だけでは足りない。通貨・指数の共通因子、方向、相関、同時ストップ、証拠金の同時消費まで分解する。
  • 個別1%でも、共通因子が重なると1つの値動きで複数が同時に効く(架空例では合計3%のうち各因子2%が同時損失)。
  • 相関は期間・時間軸・局面で変わる。低相関を理由に合算から自動減額しない。
  • 数値はすべて架空の教育用データ。実際の契約仕様・価格・成績ではない。
目次を開く
  1. 結論:単純合算は出発点、因子まで分解する
  2. 用語と前提:gross risk・因子・相関
  3. 各損失を口座通貨で合計する
  4. 通貨・指数への偏り(net/gross)
  5. 3ポジションの架空ケース
  6. 相関は固定値ではない
  7. 同時ショックのストレス行
  8. 必要証拠金と余剰証拠金の合算
  9. 合算ワークシートで確認
  10. リスクを抑えるルール設計
  11. よくある失敗
  12. 実務チェックリスト
  13. 無料・Pro・Premiumの役割差
  14. よくある質問
  15. まとめと次の一歩
  16. あわせて読みたい

結論

結論:複数ポジションのリスク計算は「合計」から始めて「因子」まで分解する

複数ポジションのリスク計算は、まず各ポジションの損切り時の想定損失をすべて口座通貨へ換算し、単純に合計するところから始めます。これがgross open risk、つまり全部が同時にそれぞれの損切りに達したときの最悪時の損失予算です。ただしこの単純合計は出発点にすぎません。実際には、同じ通貨や同じ指数への共通因子、ポジションの方向、相関、そして証拠金の同時消費まで分解して初めて、本当のリスクの偏りが見えてきます。

特に見落としやすいのが、個別に1%ずつのリスクで設計しても、共通因子が重なると1つの値動きで複数のポジションが同時に損切りされ得る、という点です。3つで合計3%のはずが、USDロングに偏っていればUSDが逆行しただけで2ポジションが同時に効き、実質2%が一度に動きます。取引量そのものの決め方はFX・CFDロット計算の完全ガイドにまとめており、本記事はそこで決めた各ポジションを、口座全体でどう合算して見るかに集中します。

以下の数値・図表はすべて架空の教育用データで、実在する価格・契約仕様・成績ではありません。金額の大小そのものではなく、合算と分解の手順を読むためのものです。

用語と前提

用語と前提:gross risk・共通因子・net/gross exposure・相関

合算の話に入る前に、登場する言葉を単位付きで整理します。定義は業者や文脈で表現が変わり得るため、ここでは一般化した教育用の呼称として扱います。

  • gross open risk(円):各ポジションの損切り想定損失を口座通貨へ換算し、方向を無視して単純合計した額。最悪時の損失予算の上限的な見方。
  • 共通因子:複数のポジションを同時に動かす要素。例:USDの強弱、リスクオン/リスクオフ、特定指数の方向など。
  • net exposure:ある通貨・因子について、ロングとショートを相殺したあとの正味の偏り。
  • gross exposure:相殺せずに合計した総量。ヘッジのつもりが実は相殺されていない、という誤解を防ぐために両方を見ます。
  • 相関:2つの値動きが一緒に動く度合い。−1〜+1で表しますが、期間・時間軸・相場局面で変わる変動値です。
  • 換算レート:外貨建ての損失を口座通貨へ直す係数。向きを間違えると損失の大小を取り違えます。

各ポジションを口座残高の何%のリスクで設計するかという1トレード単位の考え方は1トレードあたりのリスク割合の記事で扱っています。本記事は、そこで決めた1%・2%を複数本まとめたときに何が起きるかを見る位置づけです。

合計する

各ポジションの損失を口座通貨で合計する

合算の第一歩は、各ポジションの損切り想定損失を同じ口座通貨(ここでは円)にそろえることです。1本あたりの想定損失は次の式で求めます。

1ポジションの想定損失[円] = 損切り幅 × 1lotあたり価値 × lot × 換算レート
gross open risk[円] = Σ(各ポジションの想定損失[円])
残高比(gross)[%] = gross open risk[円] ÷ 口座残高[円] × 100

ここで大切なのは換算レートの向きです。外貨建ての損失は、口座通貨へ直す向きで換算します。たとえばEUR/USDを売って建玉通貨(USD)での損失が約66.7 USDになる場合、口座が円建てならUSD/JPY=150.00の向き(1 USD=150円)で掛けて、66.7 USD × 150 ≒ 10,000円とします。この向きを逆にすると損失額が桁違いになるため、必ず「建玉通貨の損失 × その通貨を円へ直すレート」で計算してください。円建て価格の通貨ペア(USD/JPYなど)は換算レートが1になります。

1lotあたりの価値や損切り幅から個別のロットを決める式そのものはFXロット計算の公式で扱っています。本記事の合算表では、各ポジションの「1pip/pointあたり価値(円・lotと換算込み)」をあらかじめ折り込んだ値として示し、損切り幅を掛けるだけで想定損失が出るようにしています。

偏りを見る

通貨・指数への偏り:net/gross exposureで見る

合計額(gross open risk)だけでは、「どの因子に偏っているか」は見えません。ここで通貨・指数への偏りを、方向つきで集計します。異なる銘柄でも、構成通貨に分解すると同じ因子が重なることがあります。

典型例が、EUR/USD買いとGBPUSD買いを同時に持つケースです。銘柄は違いますが、どちらもUSDショート側なので、USD要因が二重に乗ります。USDが上昇(EUR・GBPが下落)すれば両方が同時に逆行し、単純合計以上に一方向へ偏った状態です。逆に、一方が買い・他方が売りでUSDの向きが打ち消し合えば、net exposureは小さくなり、gross(総量)は大きくてもnet(正味)は軽い、という見え方になります。

だからこそ、通貨別にnet(相殺後)とgross(総量)を併記すると、見た目より偏っている状態や、逆に思ったよりヘッジが効いている状態に気づけます。株価指数CFDのように商品自体が特定通貨建て・特定地域のリスクオンに連動する場合も、同じ因子として扱います。CFDの契約サイズやpoint価値の考え方はCFDのロット計算方法で解説しています。なお、この集計はあくまで偏りに気づくための概念整理であり、売買の推奨ではありません。

架空ケース

3ポジションの架空ケース:個別1%でも合計3%、しかも因子が重なる

ひとつの架空データセットを、この先の表・図・ワークシートで最後まで使い回します。口座残高は1,000,000円、各ポジションは残高の1.0%(10,000円)で損切りを設計した、という前提です。以下はすべて教育用の架空例で、実在の価格・契約仕様ではありません。

表1:3ポジションの想定損失を口座通貨(円)で合計する(架空の教育用データ。口座残高1,000,000円)
ポジション方向損切り幅価値(円・lot換算込)想定損失残高比主な共通因子
USD/JPY買い50 pips200円/pip10,000円1.0%USDロング・リスクオン
EUR/USD売り40 pips250円/pip10,000円1.0%USDロング
US30買い25 pts400円/pt10,000円1.0%リスクオン
gross open risk30,000円3.0%単純合計(方向無視)

gross open riskは30,000円(残高比3.0%)です。各行の「価値(円)」は、外貨建てのEUR/USDやUS30についても、1lotあたりの価値に数量と円換算を折り込んだ値として示しています(例:EUR/USD売りの10,000円は、建玉通貨USDでの約66.7 USDの損失をUSD/JPY=150で円換算したものです)。ここまでは単純合計で、まだ因子の重なりは反映していません。

3ポジションの想定損失を口座通貨へ換算してgross open riskへ合流させる流れ図 左にUSD/JPY買い1万円、EUR/USD売り1万円(建玉通貨で約66.7USD)、US30買い1万円の3つの損失。中央の「口座通貨(円)へ換算」を経て、右側でgross open risk3万円(残高比3.0%)へ合流します。すべて架空の教育用データによる概念図です。 USD/JPY 買い 損失 10,000円(円建て・換算1) EUR/USD 売り 約66.7USD → 10,000円 US30 買い 損失 10,000円(換算込) 口座通貨 (円)へ換算 gross open risk 30,000円 残高比 3.0% Σ 合計
架空の教育用データ3つの損失を口座通貨へ換算してから合流させる流れ。金額は表1と同一です。実際の契約仕様・価格ではありません。

問題はここからです。3ポジションを共通因子で見直すと、USD/JPY買いとEUR/USD売りはどちらもUSDロング、USD/JPY買いとUS30買いはどちらもリスクオンに偏っています。因子ごとに損失を集計すると、次の偏りマップのようになります。

共通因子ごとの同時損失の偏りマップ USDロング因子にはUSD/JPY買いとEUR/USD売りの2ポジションが乗り、合計20,000円(残高比2.0%)。リスクオン因子にはUSD/JPY買いとUS30買いの2ポジションが乗り、合計20,000円(残高比2.0%)。gross合計は30,000円ですが、単一因子の同時損失は各2.0%に達します。架空の教育用データです。 共通因子ごとの同時損失(1つの値動きで同時に効く額) USDロング 20,000円 ・ 2.0%(2ポジション) USD/JPY買い + EUR/USD売り リスクオン 20,000円 ・ 2.0%(2ポジション) USD/JPY買い + US30買い gross合計は3.0%だが、単一因子の逆行で2.0%が同時に動く。USD/JPY買いは両因子に重複計上。
架空の教育用データ因子別の同時損失。色(濃紺=USD、茶=リスクオン)だけでなく、ポジション名・金額・%・件数を併記しています。USD/JPY買いは両因子に重複して効く点に注意。

gross open riskは3.0%ですが、USDが逆行する1つの値動きだけで2.0%(USDロングの2ポジション)が同時に動き、リスクオフの1つの値動きでも2.0%(リスクオンの2ポジション)が同時に効きます。「3本に分散したから1本あたりのリスクは軽い」という感覚と、実際に単一因子で動く額は大きく異なります。これが、単体計算の積み上げだけでは複数ポジションの全体像が見えない理由です。

相関

相関は固定値ではない:低相関を理由に自動減額しない

因子の重なりを数値で見る道具のひとつが相関です。ただし相関は−1〜+1の間で動く変動値で、期間・時間軸・相場局面によって変わります。平常時に低くても、急変時には多くの資産が同じ方向へ動きがちで、いちばんリスクが集中する局面ほど相関が上がることも珍しくありません。次は3銘柄の相関行列の教育例です。

表2:3銘柄の相関行列(架空の教育用データ。相関は期間・時間軸・局面で変動する参考値であり、固定値ではありません)
相関USD/JPYEUR/USDUS30
USD/JPY1.00-0.60+0.55
EUR/USD-0.601.00+0.20
US30+0.55+0.201.00

色(青=正、赤=負)だけでなく、符号と数値を必ず併記しています。ここで注意したいのは、行列そのものは銘柄間の関係であって、いま持っているポジションの方向を掛け合わせて初めてリスクの重なりになる、という点です。この例ではUSD/JPYを買い・EUR/USDを売っているため、両者の−0.60という負の相関は、方向を考えると「同じUSDロング方向に効く」ことを意味します。相関の符号を機械的にヘッジと読み替えると誤ります。

そして最も重要なのは、低い相関を理由に、gross open riskから自動的に損失を差し引かないことです。過去に相関が低かったからといって将来もそうとは限らず、急変時に相関が跳ね上がると、減額した分だけ損失を過小評価します。相関は「因子の重なりに気づく材料」として使い、損失予算そのものは保守的にgrossで見るのが安全です。戦略ごとの損失特性や、条件が変わったときの振る舞いを検証する考え方は戦略の損失特性・堅牢性を検証するワークベンチも参考になります。

ストレス

同時ショック・ギャップ・スリッページのストレス行は別に持つ

通常の損切り損失と、急変時の損失は混ぜないことが大切です。ストップ注文は指定価格での約定を保証せず、窓開け・急変・流動性低下・スリッページがあると、想定した損切り幅を超えて損失が拡大することがあります。そこで、合算表には通常ストップの行と、ストレスの行を分けて持ちます。

表3:通常ストップ損失とストレス損失を分けて見る(架空の教育用データ。ストレスはギャップ・スリッページを織り込んだ仮定値)
ポジション通常ストップ損失ストレス損失(仮定)
USD/JPY 買い10,000円15,000円+5,000円
EUR/USD 売り10,000円15,000円+5,000円
US30 買い10,000円20,000円+10,000円
合計30,000円(3.0%)50,000円(5.0%)+20,000円(2.0%)

通常時のgross open riskは30,000円(3.0%)ですが、ギャップやスリッページを仮定したストレス行では50,000円(5.0%)まで膨らみます。指数CFDのように急変時のギャップが大きい商品ほど、この差が広がります。ストレス損失は「保証された数値」ではなく、あくまで仮定を置いた別枠です。通常ストップ損失をリスク予算の設計に、ストレス損失を余力の確認に使い、両者を混ぜないでください。含み損の拡大に対する証拠金側の耐性は、次の証拠金合算のセクションで確認します。

証拠金の合算

必要証拠金と余剰証拠金を合算で確認する

損失予算とは別に、複数ポジションでは必要証拠金の合算も見ます。各建玉の必要証拠金を足し合わせ、合計使用率と余剰証拠金で口座全体の余力を確認します。

表4:必要証拠金の合算と余剰証拠金(架空の教育用データ。口座残高1,000,000円。証拠金額は仮定値)
ポジション必要証拠金想定損失主な共通因子
USD/JPY 買い120,000円10,000円USDロング・リスクオン
EUR/USD 売り180,000円10,000円USDロング
US30 買い100,000円10,000円リスクオン
合計400,000円30,000円使用率 40.0% / 余剰 600,000円

合計必要証拠金は400,000円で、口座残高1,000,000円に対する合計使用率は40.0%、余剰証拠金は600,000円です。注意すべきは、同一通貨や同一指数に偏っていると、値動きが同時に効いて評価損益がまとめてマイナスに振れ、この余剰証拠金が想定より速く削られる点です。含み損は現在価格で評価する未確定の損益で、証拠金維持率やロスカット判定に効きます。損切り時の想定損失(リスク予算)とは役割が違うので、区別して見てください。

単体の必要証拠金・使用率・実効レバレッジの計算そのものは必要証拠金・証拠金使用率・実効レバレッジの計算方法で詳しく扱っています。ここで示した合算使用率はあくまで単純合計の概算で、業者の正式な証拠金維持率計算やロスカット水準を置き換えるものではありません。維持率の定義・評価対象・ロスカット水準は、必ず利用する口座の公式仕様でご確認ください。

確認手順

合算ワークシートで確認する(教育用ミニ計算機)

ここまでの合算の流れを、下の教育用ワークシートで体感してください。3ポジション分の想定損失・必要証拠金・共通因子タグを入れると、gross open risk、残高比、合計必要証拠金、証拠金使用率、余剰証拠金、そして因子別の同時損失集計を表示します。相関による自動分散控除や売買判断は行いません。JavaScriptが無効でも、直後の静的な計算表で同じ入力例・式・答えを確認できます。

複数ポジション合算リスク 教育ワークシート(入力はブラウザ内で完結し、送信・保存はしません)

残高比・使用率の分母。0より大きく。

ポジション 1

ポジション 2

ポジション 3

gross open risk(想定損失合計)30,000円
残高比(gross)3.0%
合計必要証拠金400,000円
証拠金使用率40.0%
余剰証拠金600,000円

共通因子別の同時損失(1つの因子で同時に効く額)

USDロング(2件)20,000円 ・ 2.0%
リスクオン(2件)20,000円 ・ 2.0%

式:gross open risk=10,000+10,000+10,000=30,000円、残高比=30,000÷1,000,000×100、合計必要証拠金=120,000+180,000+100,000=400,000円、使用率=400,000÷1,000,000×100、余剰=1,000,000−400,000。

未考慮:相関による自動分散控除は行いません。スプレッド・手数料・スワップ・含み損・評価損益・ロスカット・約定スリッページは含みません。因子別集計はタグの単純合計で、売買判断ではありません。単純化のため実ツールや業者仕様と異なる場合があります。無料ロット計算機で契約仕様を含めて再確認してください。

表5:ワークシートの初期値と同じ静的な計算例(JavaScript無効時のフォールバック・架空の教育用データ)
項目式と代入答え
gross open risk10,000 + 10,000 + 10,00030,000円
残高比(gross)30,000 ÷ 1,000,000 × 1003.0%
合計必要証拠金120,000 + 180,000 + 100,000400,000円
証拠金使用率400,000 ÷ 1,000,000 × 10040.0%
余剰証拠金1,000,000 − 400,000600,000円
USDロング因子10,000(USD/JPY買い)+ 10,000(EUR/USD売り)20,000円 ・ 2.0%
リスクオン因子10,000(USD/JPY買い)+ 10,000(US30買い)20,000円 ・ 2.0%

ルール設計

リスクを抑えるルール設計(売買推奨ではない)

合算リスクや因子の偏りが見えたとき、それをどう抑えるかは個別銘柄の売買判断ではなく、事前に決めるルール設計として扱います。以下は考え方の例で、特定の売買を勧めるものではありません。

  • 数量の縮小:因子が重なっていると気づいたら、1本あたりの数量を下げて、単一因子で動く同時損失を許容範囲に収める。
  • 同時保有上限:同時に持つポジション数や、gross open riskの上限(例:残高比の合計を一定以下)をルール化しておく。
  • 共通因子上限:単一因子(USDロング、リスクオンなど)で同時に動く額に上限を設ける。3本合計より、1因子の同時損失のほうが効くことが多い。
  • 期間リスク予算:1日・1週間など期間ごとに、取ってよい合算リスクの総量をあらかじめ決め、使い切ったら新規を止める。

これらは「安全なロット」や「必ず守れるリスク量」を保証するものではなく、あくまで見落としを減らすための自分向けの枠組みです。同一銘柄・同一方向へ積み増すナンピンやピラミッディングでは、平均取得価格が動き、共通因子への偏りが一段と強まります。追加エントリー前の総リスクと平均価格の求め方はナンピン・ピラミッディングの平均価格と総リスク計算で扱っています。

回避

よくある失敗と回避のしかた

複数ポジションのリスク計算での誤りは、いくつかの型に集約されます。心当たりがあれば、その項目が見直しの入口です。

  • gross合計だけで安心する:3本で3%と把握しても、単一因子で2%が同時に動く偏りを見落とす。因子別の同時損失を必ず併記する。
  • 低相関を理由に減額する:過去の低相関を根拠にgrossから差し引くと、急変時に相関が上がって過小評価になる。
  • 換算の向きを間違える:外貨建て損失を口座通貨へ直す向きを逆にして、損失の大小を取り違える。
  • net exposureを見ない:異なる銘柄でも同じ通貨に偏っていることに気づかず、ヘッジのつもりが二重の片張りになっている。
  • 通常損失とストレス損失を混ぜる:ギャップ・スリッページ込みの数値をリスク予算に混ぜて、平常時の設計が歪む。
  • 証拠金を単体でしか見ない:合算使用率と余剰証拠金を見ず、同時の含み損拡大で維持率がまとめて悪化する余地を残す。

実務チェックリスト

複数ポジションの実務チェックリスト

次の項目を、複数ポジションを組む前に一度ずつ確認します。合否や売買判断を出すものではなく、合算での見落としを減らすための手順です。

  • 各ポジションの損切り損失を、同じ口座通貨へ換算の向きに注意して合計したか(gross open risk)。
  • gross open riskの残高比が、あらかじめ決めた同時保有上限に収まっているか。
  • 構成通貨・指数に分解し、共通因子ごとの同時損失(net/gross)を集計したか。
  • 相関を参考にとどめ、低相関を理由に合計から自動減額していないか。
  • 通常ストップ損失とストレス損失を分けて確認したか。
  • 必要証拠金を合算し、合計使用率と余剰証拠金で口座全体の余力を見たか。
  • 証拠金率・最小lot・維持率・ロスカット水準を、利用する業者の公式仕様で確認したか。

段階

無料・Pro・Premiumの役割差:課題別に見る

この記事で扱った合算リスク・偏り・相関・証拠金合算のうち、どこまでを無料で確認でき、どこからが上位の機能かを課題別に整理します。単体計算で解ける範囲は無料で十分で、単体では解けない課題が出てきた地点で上位を検討する、という段階設計です。機能名・提供範囲・料金は変わり得るため、最新はプランページを唯一の正としてご確認ください。

表6:課題別の役割差(無料・Pro・Premium)。機能・範囲・料金は現行プランページが唯一の正です。
課題無料ProPremium
単一ポジションの推奨ロット・損失・証拠金
複数ポジションの合算リスク(gross)
通貨・指数への偏り集計(net/gross)
相関リスクの参照(教育的)
ナンピン/ピラミッディングの平均価格・総リスク
基本的な証拠金維持率分析
暗号化Vault・継続管理・リスク予算
急変・窓開け・スリッページ込みストレステスト
無料

単一ポジションの前提確認

  • 推奨ロット・損切り損失・必要証拠金
  • 実効レバレッジ・使用率
  • 結果コピー・URL共有
Pro

複数ポジションの分析

  • 合算リスク・通貨/指数の偏り
  • 相関リスク・平均価格と総リスク
  • 基本的な維持率・仕様管理
Premium

継続管理とストレス

  • 暗号化Vault・リスク予算
  • 高度な維持率シナリオ
  • 急変・窓開け込みストレステスト

この記事の合算・偏り・相関・証拠金合算は、単体では見えない課題が出てきた地点で上位を検討する材料です。単体の必要証拠金の確認で足りるうちは、無料の範囲で十分です。

FAQ

よくある質問

複数ポジションのリスクはどう合算しますか?
まず各ポジションの損切り時の想定損失額を、すべて口座通貨へ換算してから単純に合計します。これがgross open risk(合算した最悪時の損失予算)です。各損失=損切り幅×1lotあたり価値×lotで求め、外貨建てなら換算レートの向きに注意して口座通貨へ直します。ただし単純合計は出発点にすぎず、同じ通貨や指数への偏り、方向、相関、証拠金の同時消費まで分解して初めて全体像が見えます。相関が低いことを理由に合計から自動的に差し引くのは避けてください。
各取引1%なら3つで3%ですか?
各ポジションを口座残高の1%で設計していれば、gross open riskは単純合計で3%です。ただしこの3%は、3つが同時にそれぞれの損切りに達した場合の損失予算という意味です。本当の注意点は、共通因子が重なると1つの値動きで複数が同時に損切りされ得ることです。たとえばUSDロングに偏っていれば、USDが逆行しただけで2ポジションが同時に効き、実質的に2%が一度に動きます。個別1%の積み上げと、共通因子ごとの同時損失は分けて確認してください。
相関が低ければリスクを減らして計算できますか?
教育的には推奨しません。相関は固定値ではなく、期間・時間軸・相場局面で変わり、平常時に低くても急変時には多くの資産が同じ方向へ動きがちです。過去の低い相関を理由に単純合算から自動で減額すると、いちばんリスクが集中する局面で損失を過小評価します。相関は「因子の重なりに気づくための材料」として使い、損失予算そのものはgross open riskで保守的に見るほうが安全です。相関の数値は参考として扱い、下げ幅の根拠にはしないでください。
異なる通貨ペアのUSD偏りはどう見ますか?
各ポジションを構成通貨に分解し、通貨ごとにロング・ショートの向きと金額を集計します。たとえばEUR/USD買いとGBPUSD買いは銘柄は違ってもどちらもUSDショート側で、USD要因が二重に乗ります。逆に一方が買い・他方が売りならUSDは一部相殺され、net exposureは小さくなります。単純合計(gross)だけでなく、通貨別のnet/grossを併記すると、見た目より偏っている状態に気づけます。集計は概念整理であり、売買判断ではありません。
含み損と損切り時損失はどう区別しますか?
含み損は現在価格で評価した未確定の損益で、証拠金維持率やロスカット判定に効きます。損切り時損失は、あらかじめ決めた損切りに達したときに確定する想定損失で、リスク予算の設計に使います。合算リスクの表では、通常の損切り損失の行と、ギャップやスリッページで損切りを超える可能性を見るストレス行を分け、混ぜないことが大切です。含み損の拡大時にどこまで耐えられるかは証拠金側、損切りで失う額はリスク予算側と、役割を分けて確認してください。
複数ポジションの証拠金はどう管理しますか?
各建玉の必要証拠金を合算し、合計使用率と余剰証拠金で口座全体を見ます。同一通貨や同一指数に偏っていると、値動きが同時に効いて評価損益と維持率がまとめて悪化し、余剰証拠金が想定より速く削られます。単体の必要証拠金は無料計算機で確認できますが、合算使用率や偏りの同時消費まで見るには複数ポジションの視点が必要です。維持率の正式な計算やロスカット水準は業者定義に従い、この記事の概算は置き換えにはなりません。
ナンピンは別ポジションとして足しますか?
合算リスクを見るときは、追加した建玉も別ポジションとして損失と証拠金を足すのが基本です。ただしナンピンやピラミッディングは同一銘柄・同一方向への積み増しなので、平均取得価格が動き、共通因子への偏りが一気に強まる点が単独ポジションとは異なります。合計損失予算と偏りは足し算で確認しつつ、平均価格の移動と追加後の総リスクは専用の考え方で分けて計算してください。平均価格と総リスクの求め方は関連記事で扱っています。
Pro版では何を分析できますか?
Proは、無料の単一ポジション計算に加えて、複数ポジションの合算リスク、同一通貨・同一指数への偏り、相関リスク、ナンピン/ピラミッディングの平均価格と総リスク、銘柄別・ブローカー別の契約仕様管理、基本的な証拠金維持率分析を対象とします。単体計算では見えない「共通因子の同時損失」や「合算使用率」を一画面で把握したいときの領域です。暗号化Vaultでの継続管理や急変・窓開けを含むストレステストはPremiumの範囲です。機能名・提供範囲・料金は変わり得るため、最新はプランページでご確認ください。

まとめ

まとめ:複数ポジションの合算リスク計算と次の一歩

複数ポジションのリスク計算は、各損切り損失を口座通貨で合計してgross open riskを出すところから始まります。要点は、単純合計は最悪時の損失予算の出発点にすぎず、通貨・指数の共通因子、方向、相関、同時ストップ、証拠金の同時消費まで分解して初めて、本当の偏りが見えるということです。架空例では、個別1%・合計3%でも、単一因子の逆行で2%が同時に動きました。

実務では、(1)各損失を換算の向きに注意して合計し、(2)共通因子ごとの同時損失をnet/grossで集計し、(3)相関は参考にとどめて自動減額せず、(4)通常損失とストレス損失を分け、(5)必要証拠金を合算して余力を見る——この5点を押さえれば、複数ポジションの見落としは大きく減らせます。

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LC10:ナンピン・ピラミッディングの平均価格と総リスク計算|追加エントリー前のリスク予算 — 同一銘柄へ積み増すときに、平均取得価格と総リスクをどう分けて計算するかを確認できます。